研究課題/領域番号 |
23700519
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研究機関 | (財)かずさDNA研究所 |
研究代表者 |
岡村 佳明 (財)かずさDNA研究所, ヒトゲノム研究部, プロジェクト研究員 (90569831)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ヒト人工染色体 / トランスジェニックマウス / 遺伝子機能解析手法開発 |
研究概要 |
ヒト人工染色体(HAC; Human Artificial Chromosome)は、セントロメア領域由来反復DNA配列(アルフォイドDNA)を持つ環状型染色体ベクターであり、宿主染色体とは独立かつ安定的に分配・維持される。また、アルフォイドDNAの繰り返し単位中にtetO配列を組込んだ合成アルフォイドDNAからなるHAC(tetO-HAC)に、転写サイレンサーtTS(Dox依存的に結合制御が可能)を結合させ、HAC上にヘテロクロマチン化を過剰に誘導すると、細胞増殖と共に急速に細胞から脱落していくことが当研究グループにより証明されている。本研究は、脱落制御可能なtetO-HACを保有するマウス個体を作製・解析することで、新たな遺伝子機能解析手法の開発を目指したマウス個体におけるtetO-HACの性状解析を目的とする。本年度は、遺伝子発現カセット搭載可能なtetO-HACの作製、マーカー遺伝子の搭載、tTS発現マウス作製用transgeneの構築が完了した。マーカー遺伝子の搭載については、具体的にCAGプロモーターからGFPもしくはtTS-EYFPを発現するカセットをtetO-HACに搭載した株をそれぞれ複数得た。また、予備実験から培養細胞において新規tetO-HACの脱落制御も確認できた。これらの結果は、本研究において一番重要な実験材料が得られたことと、実際に予定している実験の確証が培養細胞レベルで得られたことを意味している。今後は、このマーカー遺伝子発現カセットを搭載したtetO-HACを保有するマウス個体の作出へ向けて実験を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、遺伝子発現カセット搭載可能なtetO-HACの作製、tetO-HACへのマーカー遺伝子搭載とtTS発現マウス作製用trans geneの構築が完了した。新規に作製されたtetO-HACについては、CAGプロモーターからGFPもしくはtTS-EYFPを発現するカセットを搭載した株をそれぞれ複数得た。特に、tetO-HAC自身にtTS-EYFP発現カセットを搭載した株においては、Dox非存在下で結合を誘導した場合にtetO-HACの脱落が確認された。この結果から、遺伝子発現カセットがtetO-HACの脱落制御に影響を及ぼさないことだけでなく、tetO-HACから発現するtTSにより自己脱落制御も可能であるというtetO-HACの新たな性質が明らかとなった。このように、当初の計画の大部分が達成され、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、今後はマーカー遺伝子発現カセット搭載tetO-HACをES細胞へtransferし、キメラマウス作出後、tetO-HAC保持マウス個体を得る。同時にtTS発現トランスジェニックマウスの作製も進める。最終的にこれらのマウスを掛合わせる事でマウス個体内でのtetO-HACの脱落制御とHACに搭載したマーカー遺伝子の発現との相関を詳細に調べていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画通り、マーカー遺伝子発現カセット搭載tetO-HAC保有マウス個体を作出するために必要な、ES細胞培養用試薬類や実験用動物等に研究費を使用していく予定である。
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