SJLマウスはMHV-A59に感染するがB61baマウスは感染しない。両者のMHV感受性がウイルス受容体CEACAM1に依存するか明らかにするため、マウス体内での1bおよび1baの受容体機能についてマウス腹腔マクロファージ(PM)を用いたex vivo実験系で解析した。SJLのPMはMHVに感受性を示し、抗1bモノクローナル抗体で細胞を処理することでPMへのMHV感染が阻止されたことから、lbはマウス体内で受容体として働くと考えられた。一方1baを発現しているB61baのPMにはMHV感染が認められないことから、1baはマウス体内で受容体として機能しないと考えられた。しかしながら1baをMHV非感受性の株化細胞に発現させると1bと同程度の受容体活性を示す。1baがマウス体内で受容体として働かない分子機構を明らかにするために、SJLマウスとB61baマウスとの交配により得たF1マウスを用いて、CEAC闇1の受容体機能を補助する因子がSJLマウスに存在するか調べた。F1マウスのPMへの感染は抗lb抗で細胞を前処理すると阻止された。このことからlbはF1マウス体内でMHV受容体として機能するが1baは機能しないと考えられた。したがってSJLマウスにCEACAM1の受容体機能補助因子が存在するのではなく、1baが受容体として働かない別の分子機構が存在することが示唆された。このことからマウスのMHV感受性はCEACAM1の受容体活性だけでは説明がつかず、他の宿主因子により影響を受けることが示唆された。その宿主因子を明らかにするためにはさらなる解析が必要である。その一つとしてB61baマウス体内に存在するCEACAM1の受容体機能を阻害する因子について解析を進めたい。以上の研究成果は本研究で初めて明らかになったものであり、マウスのMHV抵抗性機構を解明する上で不可欠な知見である。
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