研究課題/領域番号 |
23700521
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
岡田 浩典 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 遺伝子疾患治療研究部, 科研費研究員 (80416271)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | アデノ随伴ウイルスベクター / コモンマーモセット / 受精卵 / 遺伝子挿入 / 疾患モデル動物 |
研究概要 |
本研究ではアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いてコモンマーモセットの受精卵ゲノム上のAdeno-associated virus integration site 1(AAVS1)領域に限定された効率的な遺伝子導入方法を開発する。そのためは (1)コモンマーモセットのAAVS1 領域の同定 (2)AAVS1 領域へ目的遺伝子を挿入するためのAAV ベクターの構築 (3)AAV ベクターのコモンマーモセット受精卵への感染条件の検索が必要である。当該年度はその中でも(1)および(2)について重点的に検討した。ヒトのAAVS1 領域については19 番染色体(19q13.4 qtr)に存在することが知られている。コモンマーモセットにおいては、ヒトAAVS1 と相同性が高く、その上流および下流に存在する遺伝子も一致している領域がコモンマーモセット22 番染色体上の45.95-8Mb 付近に認められたが、この領域の1.6Kb が未解読であった。この領域をシークエンス解析したところ、AAVゲノムの挿入に必須なRep binding site (RBS)およびTerminal resolution site(TRS)の配列が存在することが確認された。すなわち、マーモセットにおいて、Repタンパクを用いてAAVベクターゲノムをコモンマーモセットのゲノムに挿入する事が可能であると判断された。一方、AAV ベクターによるホストゲノムへのAAVS1領域に限定された導入遺伝子の挿入には野生型のAAV が持つRepタンパク質を作用させる必要がある。そのため、2型のAAVベクターゲノムを対象のゲノムに挿入する能力を持つ2型AAVのRepタンパク質を発現する5型AAVベクタープラスミドを構築した。これにより、目的とする2型AAVベクターゲノムのみを宿主細胞のゲノムに挿入する事が可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では経済的・倫理的に多数の検討を行う事が難しい霊長類においても確実に効率良くゲノム上の安全な領域に限定して目的とする遺伝子を挿入するために、AAV ベクターを用いたコモンマーモセット受精卵への遺伝子導入方法の開発を行っている。本法は野生型アデノ随伴ウイルス(AAV)が持つRepタンパク質を作用させ、Repを欠損するAAVベクターゲノムを、対象であるコモンマーモセットのゲノムに挿入させる。そのためには野生型AAVが挿入されることが知られるAdeno-associated virus integration site 1(AAVS1)領域がコモンマーモセットに保存されているかどうかを確認する必要があった。解析の結果、マーモセットにおいてもAAVS1領域はよく保存されており、開発中の技術が実現可能であることが示唆された。また、目的とする任意のAAVベクターゲノムを挿入する為には、これとは別にRepタンパク質を発現し、かつそれ自体は対象のゲノムに挿入されないベクターを構築することが必要である。この補助ベクターについてもベクタープラスミドの構築は完了しており、実際の導入条件の検討を開始できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではAAV ベクターを用いたコモンマーモセット受精卵への遺伝子導入方法の開発を行っている。本法は野生型アデノ随伴ウイルス(AAV)が持つRepタンパク質を作用させ、Repを欠損するAAVベクターゲノムを、対象であるコモンマーモセットのゲノムに挿入させる。現在までに、マーモセットにおいてもAAVS1領域はよく保存されていることを確認している。また、Repタンパク質を補助的に発現させるためのAAVベクタープラスミドの構築が完了している。したがって今後はまず、Rep発現AAVベクターと挿入されるを調製する。また、挿入されるAAVベクターについても調製を行う。これらを実際にコモンマーモセットの細胞に導入し、ホストゲノム上のAAVS1 領域へのAAVベクターゲノムの挿入について検証する。この目的のためにコモンマーモセット由来の細胞を不死化しており、これを用いて検討する。一方で、実際にAAV ベクターを用いてコモンマーモセット受精卵への感染条件を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
Repタンパク質を補助的に発現させるためのAAVベクタープラスミドの構築が完了している。まずこれを用いてAAVベクターを作製しなければならない。そのためには構築したベクタープラスミドを大量に調製する必要がある。このために培養液、抗生物質、精製キットを購入する。このベクタープラスミドをヒト由来不死化細胞に導入し、AAVベクターを産生させる。このためにプラスミドの導入試薬、細胞培養液、抗生物質、培養容器等がを購入する。産生されたAAVベクターを精製しなければならない。そのため、精製に必要な試薬類、強イオン交換膜、遠心チューブ等を購入する。その後、調製したAAVベクターを細胞に感染させ、AAVベクターゲノムの宿主ゲノムへの挿入を検証する。そのため、細胞培養に必要な培養液、試薬類、培養容器等を購入する。また、挿入の解析に必要な試薬類を購入する。また、受精卵に対するAAVベクターの感染条件を検討する必要がある。このために受精卵の採取に必要な製剤類や培養液、試薬類を購入する。
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