研究概要 |
本研究の目的は、インパルスのダイナミクスに基づいた神経回路の情報処理に、遺伝子解析を中心とした分子生物学を結びつける事により、特徴的な神経回路ダイナミクスに影響を及ぼす機能的分子を同定することである。本年度は、培養神経回路網の電気活動ダイナミクスに関与する遺伝子の同定に着手した。ラット胎児大脳皮質由来神経細胞の分散培養を1カ月に渡って行い、多ニューロンの自発活動を多電極アレイにより計測した。培養2週目頃から同期バースト現象が観測され、この活動は1カ月の培養期間中維持された。これと並行して、当研究室における逆転写PCR法を用いたターザット遺伝子発現の解析法を確立した。個体やスライスを用いた先行研究において、神経活動依存的に発現上昇が見られる遺伝子群が同定され始めている。これらの遺伝子をターゲットとし、分散培養系における逆転写PCRを行ったところ、arc、homerla、egr1、egr2、bdnf等の発現が見られた。さらに、1カ月の培養期間における時系列に沿った発現解析を行ったところ、最初期遺伝子であるarc,homerlaの発現は培養2週目以降徐々に上昇する傾向が見られた。この結果は最初期遺伝子の発現上昇は同期バーストの発生と関係があることを示唆している。得られた結果をもとに、現在リアルタイムPCRを用いた発現量の定量化や上流分子の発現解析を進めている。また、当初計画よりも進展があったため、平成24年度に行う予定であった外部入力による神経回路ダイナミクス可塑的変化に関与する遺伝子の同定に着手した。
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