研究課題/領域番号 |
23700524
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
前田 英次郎 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20581614)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | バイオメカニクス / メカノバイオロジー / メカノトランスダクション / MEMS / 腱・靭帯 / 力学刺激 |
研究概要 |
今年度は,はじめにMEMS技術を用いてMicrogroove実装PDMS製薄膜を組み込んだ実験デバイスを作製した.まず腱細胞がin vivoで見せる形態・配向が再現できるようMicrogrooveの幅・間隔・深さの3つのパラメータを最適化した.次いで,平行平板型流路を持つPDMS製フローチャンバーを別途作製し,Microgroove薄膜をこれに組み込むことで,繰返し引張りひずみと流れせん断応力を培養環境下で選択的あるいは同時に細胞に作用させるデバイスを作製した.ウシから採取した腱細胞の懸濁液をデバイス流路入り口から流し込み,静置培養することでMicrogroove内への接着を促進し,生体内で見られる形態と類似したMicrogroove長軸方向への整列・配向を達成した.次に,このデバイスを顕微鏡ステージ上で伸展する繰返し引張り装置を作製した.装置はリニアアクチュエータが2基搭載され,このアクチュエータと別途用意したシリンジポンプが同時に制御プログラミングソフトLabVIEWによって制御されるように作製された.作製したデバイス内の力学場(流れ場およびひずみ場)を実験的・解析的に検証した.さらに,作製した装置を用いて腱細胞Ca2+応答を観察した. Microgroove内に播種した腱細胞にCa2+指示薬Fluo-4を導入し,共焦点走査型レーザー顕微鏡上に設置した装置を用いて繰返し引張りひずみと流れせん断応力を選択的あるいは同時に負荷した. 観察領域内の細胞のFluo-4に由来する蛍光強度を負荷直後から経時的に記録し,Ca2+濃度変化を解析したところ,生理的レベルの力学負荷に対して細胞内Ca2+濃度を上昇させる細胞が観察され,特に同時引張りひずみ・せん断同時負荷の場合は反応を示す細胞の割合が有意に増加したことが示された.これらの結果は2件の国内学会および1件の国際会議で発表された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究実施計画に沿って,実験デバイスの作製ならびに腱細胞の力学刺激に対するCa2+応答を調べることを行った.いずれもおおむね計画通りに進み,国内および国際学会で成果発表するとともに,現時点で投稿論文を準備中である.なお,当初の計画ではコネキシン遺伝子発現解析を行う予定であったが,実験デバイスの作製および検証に予想外に時間を要したため,逐行とはならなかった.次年度への課題としたい.
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今後の研究の推進方策 |
実験デバイスが完成したことによって実験系が確立されたので,今後は随時実験を行い,当初の研究実施計画に沿って研究を推進していく.北海道大学ニコンイメージングセンターを利用して,力学刺激が分子レベルGJICに及ぼす影響,力学刺激がイオンレベルGJICに及ぼす影響,そして力学刺激によるギャップ結合turnoverの制御機構の解明について調べる.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が発生した理由は,当初想定したよりもMEMS関連の消耗品の購入が少なかったことが挙げられる.この繰り越される研究費は次年度支給される研究費と合わせて,交付申請書に記載した内容に沿って消耗品等物品の購入や旅費として使用する予定である.
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