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2011 年度 実施状況報告書

リンパ行性転移に対するナノキャリアの診断及び治療

研究課題

研究課題/領域番号 23700526
研究機関東京大学

研究代表者

CABRAL Horacio  東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (10533911)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワードリンパ節転移 / 高分子ミセル / オキサリプラチン
研究概要

制がん剤であるオキサリプラチンの活性体である(1,2-diaminocyclohexan)platinum(II)(DACHPt)をブロック共重合体PEG-block-poly(L-glutamic acid)(PEG-p(Glu))を用いて調製されたミセルに内包したDACHPtミセルは、治療効果の向上と副作用の低減を可能とし、現在第I相臨床治験に進んでいる。DACHPtミセルによる初期段階のリンパ節転移がんのターゲティングが可能であれば、非常に有効な治療法となりうる。そこで、DACHPtミセルを用いた治療効果の評価を行った。方法としては、マウスにB16-F10-Lucマウスメラノーマ細胞を接種し、初期段階の腋窩リンパ節の転移がんに対して、DACHPtミセルを尾静脈投与し、抗腫瘍活性の評価、DACHPtミセルの集積量の評価を行った。また、DACHPtミセルの集積経路に関する評価を行った。原発巣を切除したモデルに対しても同じ測定を行い比較を行った。さらに、オキサリプラチンを投与したモデルとの比較も行った。結果として、DACHPtミセルはオキサリプラチンと比較して、原発巣の有無に関わらずリンパ節転移がんへの集積と高い抗腫瘍効果が見られた。また、DACHPtミセルは新たなリンパ節転移の形成を抑制することも示された。蛍光X線元素分析においても、DACHPtミセルの集積をみることができた。以上のことから、DACHPtミセルの静脈投与は原発巣の治療、リンパ節転移がんの治療、リンパ節転移の抑制を行うことが可能で、リンパ節転移がんに対して非常に有効な治療法となりうることが示された。さらに、DACHPtミセルは原発巣を介さない、リンパ節転移がんへの直接のターゲティングができる可能性が提示され、本研究はリンパ節転移がんターゲティングの新たな手法を提示することができる可能性が示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

2011年度は、制がん剤を内包したナノキャリアの調製を計画していた。結果的に、DACHPtとPEG-p(Glu)の結合によってナノキャリアの調製に成功した。in vivoおよびex vivoイメージングシステムや生体内顕微鏡検査によって高分子ミセルを追跡するため、高分子ミセルに蛍光試薬を結合した。これらのナノキャリアは転移リンパ節や原発巣へのターゲティング能や治療反応の評価に用いられた。また、2011年度はがんモデルの確立も予定していた。その結果、その確立に成功した。具体的には、B16F10同系マウスにおける転移リンパ節の形成や、同所性スキルス胃がんモデルが確かめられた。適切な転移リンパ節の評価は組織学研究によって行われた。さらに、転移リンパ節のみのがんをもつがんモデルを作成するために、B16F10同系マウスの原発巣を切除した。さらに、ターゲティング能の確認も2011年度に計画された。結果、転移リンパ節へのナノキャリアによるターゲティング能は転移リンパ節へのDACHPtの集積を、正常なリンパ節と比較することによって確かめられた。ナノキャリアは正常リンパ節と比較して、転移リンパ節に2倍多く集積し、それは原発巣のないモデル、すなわち転移リンパ節のみをもつモデルにおいても見られた。最後に、2011年度に予定されていた、ナノキャリアの効果の評価について言及する。ナノキャリアの原発巣と転移リンパ節への治療反応は、がんを定量することによって評価された。ナノキャリアは原発巣だけでなく転移リンパ節に対しても効果的であり、治療反応が確認された。加えて、ナノキャリはは転移リンパ節のみをもつモデルに対しても有効であった。

今後の研究の推進方策

蛍光試薬を結合させたミセルを用いてリンパ流をin vivo イメージングすることにより、リンパ流にのったミセルのがんへの到達を可視化する。大きさの異なるミセルを用いることで、サイズ効果の評価を行う。これは到達経路の同定に利用できる可能性がある。リンパ節の組織切片を作成して組織構造を調べることで、どの段階のがんに対して本 研究の方法が有効であるかを調べる。ミセルにリガンドを付けることによってがんへの集積性を高める効果を調べる。例としては、LyP-1 と呼ばれるリンパのがんを認識するタンパク質の利用を考えている。

次年度の研究費の使用計画

2012年度の実験は以下を含んでいる:ナノキャリアを調製するための化学薬品。ナノキャリアの表面に結合するためのLyP-1ペプチド、制がん剤、溶媒、ナノキャリアをラベルするための蛍光試薬;in vitro実験のために必要な物。細胞培養プレート、培地、ウシ胎仔血清、ピペットチップ;in vivo実験のために必要な物。ペプチドを持ったナノキャリアのターゲティング能と治療効果の研究のためのマウスや消耗品など2012年度の学会や渡航の費用:NanoBio 2012 (Seattle, USA); 北海道に日本DDS学会

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公開日: 2013-07-10  

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