本研究の目的は、マクロファージのがん組織への誘引と活性化とを同時に達成できるナノ構造体を創製、がん免疫療法へ応用することである。マクロファージは、死細胞から放出される“Find-meシグナル”を起点として死細胞を除去する。このマクロファージの動き(マクロファージの死細胞部位への誘引)をがん免疫療法へ応用できないかと考えた。本研究では、“Find-meシグナル”とマクロファージ活性化薬剤とを同時に含み、がん組織へデリバリー可能なナノ構造体を、材料学を駆使して創製する。加えて、創製したナノ構造体を用いたがん免疫療法の可能性とそのメカニズムについて検討する。 平成23年度までに、“Find-meシグナル”とマクロファージ活性化薬剤とを同時に含むナノ構造体の創製方法を確立し、このナノ構造体ががん組織へ集積することを明らかにした。 平成24年度は、ナノ構造体中の“Find-meシグナル”およびマクロファージ活性化薬剤 の内包量を定量するとともに、ナノ構造体を用いたマクロファージの遊走活性解析とマクロファージからの分泌物の解析を行い、ナノ構造体によりマクロファージの誘引と活性化が可能であることを示した。最適化量の“Find-meシグナル”およびマクロファージ活性化薬剤を内包するナノ構造体を担がんマウスへ投与し、がん体積変化について調べた。その結果、“Find-meシグナル”およびマクロファージ活性化薬剤を含まないナノ構造体と比較して有意にがん体積の増加を抑制できることを示した。現在、組織化学的アプローチ(ナノ構造体投与後のマクロファージの動態の評価)にて、このナノ構造体の抗がん効果のメカニズムについて検討しているところである。
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