我々は独自のin vivoネイキッド核酸導入法である組織押圧核酸導入法(押圧法)の研究を進めてきた。本研究では培養細胞を用いて押圧法のメカニズム解明を目指す。メカニズムが明らかになることで、押圧法の技術改良が可能になり臨床応用への展開が期待される。平成25年度は研究実施計画に基づいて「伸展刺激により培養細胞への核酸導入効率は向上するのかを明らかにすること」を目的とし、以下の通り研究を行った。 まず細胞伸展マイクロデバイス上での細胞培養技術を確立した。前年度に開発した細胞伸展マイクロデバイス上で押圧法が適用できる臓器由来の細胞2種(株化肝細胞、ヒト血管内皮細胞)と適用できない臓器由来の細胞1種(株化骨格筋細胞)を培養した。まずそれぞれの細胞の最適培養条件を見出した。次にネイキッドGFP発現プラスミドDNA存在下で、デバイスを駆動させ、それらの細胞に対して押圧法と同様の条件(5秒間1回)の伸展刺激を負荷した。結果として、最大20%のひずみを細胞に負荷した場合においても、使用したすべての細胞種においてネイキッドプラスミドDNAの導入効率は向上しなかった。このことからin vitroにおいて一過性の伸展刺激のみではネイキッド核酸が細胞膜自体を突破し難いことが分かった。 本研究により押圧法において伸展刺激は、血液中に投与したネイキッド核酸が血管内皮細胞層を透過することを促進し、押圧した組織におけるネイキッド核酸の分布量を増大させることには関与するが、ネイキッド核酸が細胞膜を突破し細胞内でのネイキッド核酸の分布量を増大させることには大きく関与しないことが示唆された。このように本研究により目標であった押圧法のメカニズムの一部が明らかになった。
|