本研究では、超偏極キセノン磁気共鳴イメージング(HP 129Xe MRI)を用いて、非侵襲かつ包括的に肺疾患を診断する手法の開発を目的とした。その実現のためには、129Xe MRIの感度向上及び局所肺機能を導出可能な撮像法の開発が不可欠であるため、主に下記2項目の要素技術について、並行して研究を進めた。 1. 129Xe偏極装置の改良 HP 129Xeの偏極率向上は、生体内129Xeイメージングの高速化及び高精細化に直結する重要な役割を担う。ここでは、HP 129Xe生成における偏極効率の改善を行った。主に、偏極容器内の温度分布の均一化及び高出力半導体レーザーの狭帯域化を検討し、種々の偏極条件を最適化することにより、従来の3倍程度の感度向上を達成した。 2. 129Xe MRI撮像法の開発 種々の肺構造及び機能の同時計測法を確立することで、肺疾患の診断や病態の解明及び創薬研究への展開が可能となる。ここでは、種々のMRI撮像法をHP 129Xe MRIに適用し、局所肺機能の導出を試みた。主に、肺組織・血液に溶解した129Xe(溶解相129Xe)のイメージング及び肺空洞部の129Xe(ガス相129Xe)のイメージングを検討し、肺機能として、ガス交換能及び換気能のマッピングを可能とした。これらの手法を肺疾患モデルマウスに適用し、病態を反映した肺機能画像を取得するとともに、病態の進行過程を追跡することにより、本手法が肺疾患を包括的に評価可能であることを示した。
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