iPS細胞から分化させた細胞を生体移植するような細胞治療において、培養時には、治療効果が高いと期待される細胞を非侵襲的にモニターするとともに、生体移植後もその細胞状態をモニターするための手法が求められている。しかしながら、これまでのMU、蛍光顕微鏡、および電子顕微鏡などの単一エネルギーを用いた手法だけでは、細胞の位置とその生理的状態など空間的な広がりを持つ多次元情報を取得することができず、効率的な細胞スクリーニングとその生体内での機能評価を長期間にわたり安定に行うことができなかった。その理由として、空間的に異なるイメージングを可能にする長期安定化のための生体適合性の高いナノ材料の開発が発展途上であることがあげられる。そこで本研究では、移植する細胞を多次元的に評価するために、申請者らが開発してきた生体適合性が高いと期待されるナノダイヤモンド粒子への効率的なナノ粒子へのイオン注入技術を利用し、生体分子と相同の大きさを持つ20nm以下の蛍光、磁性ナノダイヤモンド粒子を合成し、それぞれ細胞内、および生体内長期安定プローブとすることを目指した。蛍光ナノダイヤモンド(HeND)の合成には、ヘリウムイオン注入を用い、磁性ナノダイヤモンド(MnND)の合成には、マンガンイオン注入を用いた。さらに、蛍光ナノダイヤモンドには、電子線還元法により金ナノ粒子を担時させ、金・蛍光ナノダイヤモンドハイブリッド粒子(Au-HeND)を合成した。その結果、Au-HeND投与した細胞は、蛍光顕微鏡、および電子顕微鏡での観察が可能になった。また、MnND投与した筋肉でのMBNDの局在をMRIで1週間にわたり追跡出来ることが分かった。以上の結果から、気相でのイオン注入法、および液相での電子線還元法を組み合わせた新規NDプローブの合成法により、空間的にnmスケールからcmスケールでのNDの局在を明らかにすることができた。
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