研究課題/領域番号 |
23700544
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
清野 健 日本大学, 工学部, 准教授 (40434071)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 生体信号解析 / 心拍変動 / 非ガウス過程 |
研究概要 |
(1) 非対称間欠性の解析法の開発と健常人心拍変動解析への応用:心拍変動には交感神経と副交感神経の相反的な調節機序が働いており,これらのバランスが時系列の非対称性として評価できる可能性がある.そこで本研究では,時系列の非対称性を特徴づける片側偏差,片側非ガウス指標,正負相関の3つの指標を開発した.この非対称性の解析法を使い,健常人の心拍変動を年代別に解析し,その年齢依存性を調べた.その結果,主に30秒と10分のスケールにおいてその非対称性に加齢の影響が見られた.この知見はこれまで知られていなかったものであり,非対称性に注目することで自律神経活動をより詳細に評価できる可能性を示した.(2) 心筋梗塞後患者の心臓死リスクの推定:心筋梗塞後患者の心拍変動指標について,予後予測因子であるものを検討した.その結果,25秒の時間スケールでの非ガウス指標が心臓死の選別的な予測因子であることを見出した.従来の知られている予測指標は全死亡の予測因子であったが,その非ガウス指標は全死亡の予測因子ではなかった.このことから,非ガウス指標は交感神経活動を評価している可能性が示唆された.(3) パーキンソン患者および多系統委縮症患者の心拍変動解析:我々が導入した心拍変動の非ガウス指標の増加が,交感神経緊張を定量化している可能性を,パーキンソン患者および多系統委縮症患者の心拍変動を解析することで検討した.これらの疾患では非ガウス指標が増加する傾向は見られなかった.これらの疾患では交感神経活動が弱まっていることが知られており,今回の結果は我々の仮説を支持するものであった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に予定していた5項目のうち,3項目について研究成果を論文としてまとめ発表した.残りの2項目については,次年度の計画につなげられるよう準備ができており,おおむね研究計画の内容は実施できた.
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今後の研究の推進方策 |
(1) 心拍変動の大規模データベースの解析とリアルタイム解析 現在,15万例を超える心拍変動のデータがあり,このデータを対象に気候や災害などの環境因子,疾患や加齢などの生物学的因子の影響を検討する.このデータは,地理的には日本全国から集められており,時間的には数年の範囲で分布している.2011年3月11日の東日本大震災の発生後の環境要因の影響を心拍変動解析により評価可能と考えられるので,この点についても今後検討する予定である.また,この大規模データからえられた知見を活かし,リアルタイムの心拍変動解析が実現できるシステムを今後開発する.(2) 睡眠時無呼吸症候群の睡眠時心拍変動の解析 近年,睡眠時呼吸障害と不整脈死との関連性が指摘されており,睡眠時に発生する致死的不整脈のリスク推定については,無呼吸の評価が重要である可能性がある.ここでは,睡眠検査で測定されたSpO2などの変化と短時間心拍変動の統計指標との関連性を明らかにすることを目指す.さらに,致死的不整脈発生前の前兆となる心拍変動の変化を調べ,睡眠時の致死的不整脈発生のリスク評価法を開発する.
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次年度の研究費の使用計画 |
心拍変動のリアルタイム解析装置を制作するため,生体センサー,バイオアンプなど,必要なハードウェアを購入する.また,大規模データベースの解析のため,ストレージデバイスを購入する. 研究成果の発表のため,国内学会4回,国際会議1回に参加する旅費を研究費から支出する.
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