研究課題/領域番号 |
23700545
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
三上 あかね (坂口 あかね) 東京工科大学, 応用生物学部, 助教 (70469782)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 生体情報・計測 / 細胞機能制御 / 細胞内計測 / 糖尿病 / 糖化物 / 転写調節因子 |
研究概要 |
本研究では、糖尿病合併症やアルツハイマー病等の疾病に関与する糖化物(GPs)を認識する転写調節因子の構築、及び、これに基づく、細胞内GPs濃度応答性の遺伝子発現制御技術の開発を目的とする。 本年度は、GPsに特異的に応答する転写調節因子の構築を試みた。 まず、糖化物応答性転写調節因子の検索およびクローニングを試みた。これまでに、糖化物特異的に誘導発現する真核生物由来のタンパク質の報告はない。また、これまでの研究者らの研究から細菌由来のGPs異化機構に存在するLacI様蛋白質(SocR)またはGntR様蛋白質(FrlR)の遺伝子はGPs応答性の転写調節因子 (GprR)であると示唆されている。そこで、PCRを用いてGPs資化細菌のゲノムよりSocR遺伝子およびFrlRのクローニング及び、大腸菌発現用ベクターを構築した。また、これらを用いて大腸菌を形質転換し、SocRおよびFrlRの組換え生産及び精製を行った。 続いて、in vitroにおけるGprR様タンパク質の特性検討を行った。まず得られた組換えSocRを用いて、リガンド結合能を評価したところ、SocRは、糖化物に結合することが示され、SocRは新規のGprRであることが示唆された。そこで、コンピューターシミュレーションを用いて、SocR立体構造モデル、及びSocRのリガンド(GP)結合ドメインにLacIのDNA結合ドメイン及び複合体形成ドメインを付加したキメラタンパク質(LacI-SocR chimeric protein, LSCP)の立体構造モデルを作製した。これを基に、LSCP大腸菌及び動物細胞発現用ベクターの構築を試みた。 今後、構築されたLSCPのin vitroまた、動物細胞内におけるGprR機能を示すことで、細胞内GPs濃度応答性遺伝子発現制御技術の構築が可能になると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績が上記の様であるのに対し、申請書提出時点では、平成23年度中にLSCPの転写調節因子の動物細胞内での評価を行う予定であった。このため、交付申請書に記載した『研究の目的』の達成度は、やや遅れていると評価できる。この原因としては、リガンドである糖化物の合成・精製方法、また組換えSocRの精製方法を確立するのに時間を要したためと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は、まずGprRとして構築されたLSCPの動物細胞内における転写調節因子としての機能評価を行う。LSCP遺伝子を導入した動物細胞にGPsである糖化アミノ酸、或いはグルコースを添加し、各リガンド濃度におけるレポーターの発現レベルを測定するとともに、細胞破砕液及び酵素法を用いて測定した細胞内GPs濃度との相関を検討し、動物細胞内GPsセンシング及びGPs依存的に遺伝子発現制御ができることを示す。 次に、まず糖尿病または老化モデル細胞を用い、構築した糖化物センシング技術をモデル細胞に導入し、細胞内のGPsのモニタリング及び、GPsの細胞への影響の評価を行う。またGPs濃度及び、細胞内グルコース、AGEs等の疾病指標分子の濃度との相関を検討する。必要ならば疾病関連遺伝子発現解析を行いGPs濃度との相関を検討する。 更に細胞内GPs濃度上昇に従ってGPs分解酵素や毒性AGE分解酵素の発現を誘導し、糖化された蛋白質の脱糖化反応を促進することで蛋白質機能の回復・保護を行い、また細胞機能を正常化する機構の構築を試みる。GPsのリン酸化を触媒し、脱糖化を促進する哺乳類由来の酵素は、GPsによる発現誘導性はなく、様々な組織において、微量だが恒常的に発現している。そこでオペレータ(OlacまたはOgrp)融合GPs分解遺伝子をGprRと共に、細胞に導入した後、GPs分解活性、免疫沈降法等を指標に、細胞内GPs濃度の上昇に伴って誘導されるGPs分解酵素の発現を確認する。またオペレータ融合レポータ遺伝子を導入した細胞を対照としてGPsの細胞への影響を比較を行い、細胞内GPs濃度依存的GPs分解酵素発現制御技術を用いることで、糖化による細胞の損傷を防御・緩和できることを示す。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度は、まずGprRとして構築されたLSCPの動物細胞内における転写調節因子としての機能評価を行う。このために必要な、哺乳類無細胞発現系(20万円)の購入、及び動物細胞培養用試薬(培地、血清、緩衝液、トリプシン、など)(80万円)・器具(培養フラスコ、スクレーパー、ピペット、遠沈管、など)(25万円)の購入への研究費の使用を計画する。なお交付申請書では、平成23年度中に予定されていた細胞を用いた実験の開始は、先述のように、平成24年度へ変更なった。これに伴い、細胞実験の準備に必要な費用(合計125万円程度)も、平成24年度へ繰り越すこととなった。 また、疾病モデル細胞内GPsセンシング、GPsの細胞への影響評価、及び細胞機能制御系構築に必要な、モデル細胞購入・構築費(50万円)、制御系構築用試薬費(酵素など)(50万円)、AGEs検出用ELISA購入・構築費(20万円)等へ使用する。 そのほか学会準備費、論文作成費としての使用を計画している。
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