研究概要 |
本研究の目標は active targeting 実現のための新規核酸型アプタマーリガンドの創製である。副作用の低減、作用効果の増進のためには、薬剤を選択的に標的とする組織/細胞へ送達する方法の開発が必須であり、それを実現するための標的素子の創製は喫緊の課題である。申請者は20-40 鎖長ほどのオリゴヌクレオチドからなり、特殊な二次構造により高い結合親和性および選択性で結合する分子群であるアプタマーに着目し、研究を行った。これまで、初代培養腫瘍血管内皮細胞を標的としてDNAアプタマーの単離を試み12回のセレクションとさらに正常血管内皮細胞および腫瘍実質細胞を用いてカウンターセレクションを行い、AraHH001アプタマーを得ることができた。AraHH001アプタマーは腫瘍血管内皮細胞に対して 42 nM の解離定数を示すこと、蛍光標識AraHH001は腫瘍血管内皮細胞において、エンドソームとの共局在を示すこと、AraHH001は脈管形成を阻害することを明らかにした。さらにAraHH001アプタマーが結合するタンパク質を探索し、それがTroponin Tタンパク質であることが明らかになった。Troponin Tはこれまで腫瘍血管内皮細胞に発現しているとは考えられておらず、AraHH001アプタマーをの脂質コンジュゲートを合成し、それをリポソームに組み込んだAraHH001リポソームは通常のリポソームと比較して3.5倍強く腫瘍血管内皮細胞へ結合することが明らかになった。これらの成果をまとめ、特許として「トロポニンTと結合するDNA、これを用いた腫瘍組織における血管新生および/または脈管形成抑制剤ならびにこれを用いた細胞内へ目的物質が取り込まれることを促進する剤」 (特願2012-124073)、学術論文を一報 (PLoS One, 7, e50174) を発表した。
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