研究課題/領域番号 |
23700553
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
仲井 正昭 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (20431603)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | チタン合金 / 強加工 / 耐食性 / 細胞毒性 |
研究概要 |
生体用β型チタン合金として開発されたTi-29Nb-13Ta-4.6Zr合金(TNTZ)に高圧ねじり(HPT)加工を施した場合、冷間圧延を施した場合には認められなかった、エッチング溶液により腐食されない帯状の特異相が、試料断面中央部に形成されることを見いだした。この特異相はエッチング溶液により腐食されないことから優れた耐食性を有することが示唆される。金属材料の耐食性は生体適合性と強く関連することから、優れた耐食性が得られるのであらば、細胞毒性に関しても低いことが期待される。そこで、本研究では、HPT加工を施したTNTZの耐食性および細胞毒性を評価することとした。本研究では、これらの評価を実施するに先立ち、まずはエッチング溶液により腐食されない特異相の形成条件について検討した。光学顕微鏡による観察の結果、HPT加工によりTNTZに形成される特異相は、いずれの回転数の処理を施した後にも認められ、回転数の増加とともに厚さが増大した。さらに、同一試料内においては、回転中心部よりも端部ほど特異相の厚さが増大した。これらの結果は、特異相の形成量がひずみの加え方に依存することを示唆している。さらに、HPT加工を施したTNTZの母相部と特異相部とのミクロ組織の違いを検討するため、透過電子顕微鏡(TEM)を用いて各部位のミクロ組織の観察を行った。その結果、HPT加工を施したTNTZの母相部および特異相部は、両部位ともβ相からなることがわかった。また、両部位とも、非常に微細な亜結晶粒からなるが、特異相部は母相部に比べて、加工方向に伸長していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、HPT加工を施したTNTZの耐食性を評価する前に、エッチング溶液により腐食されない特異相の形成条件を検討し、さらに、母相部と特異相部とのミクロ組織の違いについて検討した。その結果、予定どおり、特異相の形成条件や組織的な特徴を明らかにすることができた。これらの検討結果を基に特異相の形成を制御し、次年度、HPT加工を施したTNTZの耐食性および細胞毒性を行う。
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今後の研究の推進方策 |
今後、HPT加工を施した場合とそうでない場合のTNTZの耐食性および細胞毒性を評価することにより、耐食性および細胞毒性の改善に対するHPT加工の有効性について検討していく。さらに、表面に形成する不動態皮膜を詳細に分析することにより、耐食性および細胞毒性の評価結果の解釈を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費1100千円、旅費300千円、人件費・謝金50千円、その他50千円
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