本年度は昨年度に引き続き、物理・化学的性質の異なるマイクロメートルスケールのパターンによって構成された複合的ハイドロゲル材料の開発・改良を行い、またその応用展開を行った。初代肝細胞および非実質細胞を高密度かつ位置を制御して包埋したファイバー状のハイドロゲル材料については、共培養による機能維持を遺伝子発現解析によって詳細に解析した。また、ECMによって構成された数ミクロン程度の微粒子を作製し、細胞と混合して集塊を形成することによって、複合型の細胞集塊を形成し、その評価を行った。また、ストライプ状のパターンを有するハイドロゲル材料について、作製条件を詳細に検討することによって、アレイ状の線形組織体の構築が可能となった。さらに、親疎水性のパターンを利用した基板上へのハイドロゲルパターニング法について、性質の異なる複数種のゲル材料をパターン化することで、接着の性質の異なる細胞であっても形態を制御して培養できることを実証した。 また、これらのハイドロゲル材料を単位材料として利用し、より複合的な組織体を構築するための組織工学的展開を試みた。ゼラチンあるいはコラーゲンによって形成された薄層平板状のハイドロゲル材料を積層化し、酵素によって架橋することで、比較的サイズの大きい3次元的細胞培養環境の形成を試みた。また、細胞を包埋あるいは接着させたハイドロゲルファイバーを束ねて微小な流路内で潅流培養を行うことによって、生体の組織をより高度に模倣した培養系の構築を行った。さらに、血管内皮細胞を接着させたハイドロゲル部材を多種のハイドロゲル基材中に包埋することで、血管網を内包する組織体の形成を行ったほか、多層の血管構造を模倣したゲル材料を作製するためのプロセス開発を行った。
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