研究課題/領域番号 |
23700561
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田畑 栄一 九州大学, 薬学研究科(研究院), 学術研究員 (00538928)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | タンパク質化学 / DDS / ナノバイオテクノロジー |
研究概要 |
本研究課題は、siRNAを細胞内に送達するDDSの基盤技術の確立を目的としている。当該年度は、DDSキャリアとして使用するsHsp16.5の機能改変、および調製方法の確立に取り組んだ。 sHsp16.5はそれ自身はカプセル様構造を形成するのみで細胞内に移行するなどの機能は持ち合わせていない。そこで、B 型肝炎ウイルスの感染において重要な役割を担っているPreS2ドメイン中の12残基のペプチド配列と酵母の細胞内におけるタンパク質の分解シグナルであり、ほ乳類細胞でも機能することが確認されているCL1タグを導入し、細胞内に移行して封入した薬剤を放出すべく分解を受けるように機能改変を施したコンストラクトを作成した。大腸菌で発現させたが、正しくカプセル構造を取っていない封入体の状態で発現し、かつ封入体からの巻き戻しによりカプセル構造の再生を試みたが封入体に含まれていた夾雑タンパク質を除去できなかった。そこで、封入体の状態で精製して純度を上げ、その上で巻き戻す方法に変更すべく、作成したsHsp16.5の変異体に、さらに精製用にHisタグを導入した変異体を作成した。この変異体も大腸菌発現系において封入体として得られたが、変性剤で可溶化した状態でのHisタグを利用したアフィニティ精製により、純度の改善に成功した。現在、再度封入体からの巻き戻しに取り組んでいる。 タグ配列を追加することで組み替えタンパク質が封入体として発現することはよくある現象で、組み替えタンパク質調製における障害の一つである。この封入体からの巻き戻しでの調製が可能になれば、コンストラクトの設計において大きな制限の一つが取り払われることになる。また、巻き戻しでsHsp16.5の立体構造を再生させた例はなく、まずこの巻き戻しによるsHsp16.5の調製について論文にまとめる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、初年度は(1)sHsp16.5を遺伝子工学に改変、機能化したコンストラクトの作成、(2)大腸菌発現系によるsHsp16.5変異体の発現系、および精製法の確立、(3)sHsp16.5へのsiRNAの封入技術の開発、の3つのステップを完了する予定であった。しかし、sHsp16.5が封入体として発現し、なおかつ巻き戻しの操作において封入体中の夾雑タンパク質を取り込んだ状態で立体構造を再生している可能性が示唆された。sHsp16.5が封入体として発現する可能性は考慮していたが、巻き戻しにおいて夾雑タンパクを取り込んでしまう点は想定外であり、対処方法の検討に時間を要した。最終的に、封入体の状態で精製し、純度を上げてから巻き戻す方法にたどり着き、前述の通り純度の改善に成功している。 以上のように当初想定しなかった事態の解決に時間を要し、進捗がやや遅れているが、解決の目処は立っており、遅れを取り戻すことは十分に可能である
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、sHsp16.5の調製方法の検討を進める。sHsp16.5の巻き戻しによる立体構造の再生についてはこれまでに報告例がなく、調製方法が確立でき次第、巻き戻しによるsHsp16.5の調製に関する一連の実験結果を論文にまとめて投稿する予定である。 その後、sHsp16.5へのsiRNAの封入方法の確立、およびsHsp16.5の細胞への移行能を評価し、当初の計画の通り、細胞をもちいた評価に進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画よりも進捗がやや遅れたため、当該年度の予算使用学が計画を33万円ほど下回った。次年度では、進捗遅れているsiRNAのsHsp16.5への封入条件の検討、およびsHsp16.5の細胞内への移行を評価する実験に、前年度の残り33万円を充てる。 そして、当初計画で予定していた次年度の研究内容については変更はなく、計画通りの研究費の使用となる見込みである。
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