研究課題/領域番号 |
23700562
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
赤坂 恵理 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 客員研究員 (20597562)
|
キーワード | ES細胞 / iPS細胞 / 歯形成細胞 / in vitro組織再構成 |
研究概要 |
iPS細胞は、自家移植が可能で多分化能を有し、かつ細胞増殖も活発なため、それを用いた再生医療への応用が期待される。歯学領域でもiPS細胞を用いた歯の再生が待望されているが、まだ実現していない。その要因として、歯形成が複雑な細胞間相互作用で進むため、in vitroでの歯の再生には様々な因子を検討する必要があるからである。本研究課題では、このようなin vitroでの問題を回避し、マウスES細胞をヌードマウス精巣内に移植し、形成された奇形腫を初代培養し、in vitroで組織再構成を行うという独創的な方法を用い、当該細胞に由来する3次元構造を持つ歯の形成を行う。本研究の計画は以下のとおりである。 ①歯形成細胞特異的に蛍光タンパク遺伝子を発現するプラスミドを作製、②上記プラスミドをマウス ES 細胞株に遺伝子導入し、組換えES細胞を作製、③この細胞に歯形成誘導のための処理を施し、細胞集合体をヌードマウス精巣内に移植、④得られた奇形腫を初代培養系に移し、in vitroでES細胞由来の歯組織を含む組織再構成体を得る、⑤歯組織再構成体をヌードマウス上顎骨と精巣内に移植し、3次元構造を持つ歯が形成されるか検討する 平成23年度の研究成果としては、ameloblastとodontoblastの歯形成細胞に特異的に蛍光タンパクを発現するプラスミドを構築した。 平成24年度は、nucleofectionシステム(Lonza)を用いた遺伝子導入法で、マウスES細胞E14株に上記プラスミドの遺伝子導入を試みたが、導入効率が低く、また、遺伝子導入後のクローンの樹立や維持が困難だった。そこで、後述の方法を用いることでマウスES細胞E14株への遺伝子導入を可能にした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、マウスES細胞E14株にameloblastとodontoblast特異的蛍光遺伝子の発現プラスミドを導入する方法として、nucleofectionシステム(Lonza)を用いていたが、導入効率が低かったため、エレクトロポレーション法を採用した。しかしながら、遺伝子導入が困難だったり、遺伝子導入後の細胞の樹立や維持が困難だった。そこで、哺乳類細胞への遺伝子導入の効率が非常に高いとされるトランスポゾンの一種PiggyBacの系を遺伝子導入に適用することで、ES細胞へのプラスミドの遺伝子導入と細胞の維持、継代が可能になった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は得られた組換えES細胞を、ヌードマウス精巣内へ移植し、奇形腫を作製する。組み換えES細胞をそのまま移植する群(対照群)、組み換えES細胞をLIF不在下懸濁培養して得られた幾つかの初期分化細胞を含む胚様体を移植する群(実験-1群)、胎齢14日目の胎仔歯胚に由来する単一化した上皮細胞と間葉系細胞とES細胞とを混合したものを移植する群(実験-2群)、既に樹立されたラット由来 ameloblast 細胞株とES細胞を混合したものを移植する群(実験-3群)、BMPやGDF11等の成長因子を染み込ませたバイオマテリアルとES細胞とを混合したものを移植する群(実験-4群)で検討し、得られた奇形腫内の歯組織の分化状態を調べる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
消耗品費:遺伝子工学実験、細胞工学実験、動物購入等の消耗品は、本研究遂行上必須である。 旅 費:国内の各種学会への発表・参加するための旅費と資料収集のための旅費も計上している。 謝金、その他:免疫組織化学、H-E染色、RT-PCR解析等は、その経験がある大学院生に補助をお願いする予定である。また、論文作製のため論文の校閲とジャーナルへの論文投稿費を計上している。
|