研究概要 |
本研究は、リバーストランスフェクション法の遺伝子導入効率の上昇を目指して、ジスルフィド交換反応によりDNA-カチオン性高分子複合体を培地中に放出する機能性表面の開発を目的としている。本年度は、ガラス表面へのカチオン性高分子の化学修飾および調製した表面の物性評価を行った。シランカップリング反応によりチオール基を導入したカバーガラス表面とピリジルジスルフィド基を導入したポリエチレンイミン(PEI)を反応させ、PEIを表面修飾した。調製したPEI-ガラス表面は、X線光電子分光(XPS)および表面ゼータ電位の測定結果より、ジスルフィド結合を介してPEIが修飾されていることを確認した。また、PEI-ガラス表面を0, 0.4, 1, 5 mmol/LのCys含有リン酸緩衝液(pH 7.4, 200 mmol/L)にそれぞれ25°C で24時間浸漬した後、表面ゼータ電位を測定すると、暴露していたCys濃度に応答して値が変化することがわかった。0-0.4 mmol/LのCys暴露の場合にはPEIがほとんどリリースされないため、シランカップリング反応処理のみの表面と比較して20 mV以上高い値を示したが、1-5 mmol/LとCys濃度が高くなるにしたがってPEIがリリースされてゼータ電位の値は0-0.4 mmol/LのCys暴露の場合よりも2-7 mV程度低くなる傾向が示された。この値の変化は、PEIに導入するピリジルジスルフィド基の量を変えることによっても制御することができた。以上より、低濃度のCys含有水溶液に浸漬することで、PEIをコントロールドリリースする機能性表面を調製できたと考えられる。
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