研究課題/領域番号 |
23700570
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
野口 聡 北海道大学, 情報科学研究科, 准教授 (30314735)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 磁気分離 / 磁気クロマトグラフィー / 蛋白質分離 |
研究概要 |
当該年度は、磁気クロマトグラフィーによる蛋白質分離の開発を支援するためのシミュレーションの開発を主に行った。計画では、(1)2種類以上の蛋白質の同時考慮、(2)テンソル磁化率特性考慮に取り組むことにしていた。実際には、(1)2種類以上の蛋白質の同時考慮は行えるようになり、これまで個別に解析してきた結果と同時に2種類を解析した場合の違いを示すことができた。商用ソフトウェアでは、考慮できない2種類以上の磁気特性を同時考慮するために、積層鋼板を塊として解析する手法を磁性流体解析にも取り組むことで達成した。2種類の異なる磁気特性を持っている場合には、各種類ごとにシミュレーションするよりも僅かながら大きな力が働くことが示せた。僅かな力ではあっても、磁気クロマトグラフィーの十分な長さの流路では、この差は大きくなるので、同時に2種類以上シミュレーションすることの重要性も示せた。この結果は、International Magnetics Conference 2011 (at Taipei)と18th Conference on the Computation of Electromagnetic Fields (at Sydney)の2つの国際会議で発表するに至り、論文IEEE Transaction on Magneticsに2編掲載されるに至った。続いて、(2)テンソル磁化率特性考慮のためのシミュレーションの開発も終えた。しかし、計算負荷が高く、まだ実用性に乏しい。そのため、シミュレーションによる妥当性などが十分に行えていない。そこで、次年度もシミュレーションを進め、その妥当性を確認しだい国際会議で発表する予定にしている。また、計算負荷の高さが示せたことにより、GPUなどのハード的な並列化計算による高速化の達成が重要となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に課題に挙げていた2つの項目(1)2種類以上の蛋白質の同時考慮、(2)テンソル磁化率特性考慮したシミュレーションの開発はそれぞれ達成できた。最初の検討項目である(1)2種類以上の蛋白質の同時考慮に関しては、国際会議2回で発表し、2編の論文も掲載されるに至っている。(2)テンソル磁化率特性考慮に関しては、シミュレーション開発は終わっているが、学会発表に十分なデータ収集が終わっていない。そこで、開発は終わっているが、学会発表などの公表がまだ行えていないため、「おおむね順調に進展している」に該当すると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度の研究計画としては、当初計画通り、(1)スピンの考慮、(2)解析の大規模・高速化に取り組む。より正確なシミュレーションを行うためにはスピンの考慮が欠かせないと考える。これまでに、開発してきた磁場・流体連成シミュレーション・ツールで蛋白質を対象とするためのステップと位置付けている。スピンを考慮するという技術課題には、マイクロ・マグネティクスの解析技術を導入することを計画している。解析の高速化は特に必要な技術課題となっている。当該年度で、2種類以上の磁気特性の考慮とテンソル磁化率特性の考慮を達成したが、その検証に時間を要している。その主たる原因は計算負荷の高さにあり、解析の高速化を次年度は検討する必要があると考える。この技術課題にはGPGPUを使用することで、解決を図っていく。また、次年度は簡単なシミュレーションを実施することで、シミュレーションの妥当性の検証も行っていく。前半は、磁気微粒子などを使用し、よりその差異がはっきりと表れる実験でシミュレーションの妥当性を検証していき、後半は蛋白質を使用し、検証していく計画にしている。
|