該当年度は、前年度に続き磁場・流体連成シミュレーションの高精度化を目指す。具体的には、スピンの考慮が必要となる。申請者がこれまでに開発した磁場・流体連成シミュレーション・ツールでは、磁性微粒子を想定している。磁性微粒子は、蛋白質よりも小さく、球形状をしていることから、スピンの影響がほぼなく、シミュレーションでは無視してツールを構築してきた。しかし、蛋白質では、スピンの影響は無視できないと考えられ、その考慮が必要となる。前年度に実施するメゾスコピック・スケールの解析に、ミクロ・スケールの特性であるスピンの影響を考慮することで、新たにマクロ的磁気特性を調査してきた。 さらに、これまでに開発してきたマクロ・スケールの解析においても、有限要素法では数百万から一千万程度の未知数となることが予想され、一般的なワークステーションでは計算では困難となった。また、2種類以上の性質を持つ蛋白質を同時に計算するには、有限要素法などの部分領域法では計算が現実的ではなく、該当年度では、同じ磁化量を持つなどの制限下でのみ計算が可能となった。これらを踏まえて、粒子法での磁場・流体連成シミュレーション・ツールの開発に新たに取り組んだ。粒子法では、スピン特性も考慮できることなどから、今後の発展も期待できるが、ミクロ・スケール特性をどのように考慮するかという課題が明らかになった。 このように開発してきた高精度な磁場・流体連成シミュレーション・ツールがどの程度の精度を持っているかを確認するために、シミュレーションの精度検証実験を岡山大学にて行なった。蛋白質を観測する装置が無かったため、実験では磁気微粒子による実験を行なった。また、岡山大学が所有する超電導マグネットだけでは、磁場が弱かったため、超電導バルクを用いることで、局所的に大きな磁場を生成し、実験を行なった。
|