研究課題/領域番号 |
23700572
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
佐藤 生馬 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任研究員 (00586563)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 立体視 / 輻輳角 / 立体内視鏡 / 腹腔鏡 |
研究概要 |
術野の限られた腹腔鏡下外科手術において、腹腔内で最適な視野の確保と広い輻輳角により広い範囲で違和感なく自然な奥行感のある立体画像を提示し、医師の負担を低減することを目的とした「多自由度屈曲機構と可変広輻輳角機構を備えた腹腔鏡下外科手術用立体内視鏡の開発」を行う。 初年度は市販の内視鏡の直径とほぼ同等のφ11mmで、内視鏡先端付近の側面に輻輳角を変更可能な2つのCMOSイメージセンサと照明用LEDを有する立体内視鏡部の考案・設計・試作と屈曲機構の設計を中心とした以下の(1)-(3)について研究を進めた。 (1)可変輻輳角機構を有する立体内視鏡の光学系の考案・試作: φ11mm以内となるようにSXGAの解像度を持つイメージセンサを選定し、可変輻輳角機構を有する立体内視鏡の光学系を考案し、試作を行った。本内視鏡による立体視は自然視に近い交差法とし、可変輻輳角機構は送りねじによるイメージセンサ間(基線長)を変更可能な光学系とした。光学系を試作した結果、輻輳角が大きすぎたために立体感は大きいが、視差も大きくなりすぎてしまい、立体的に見える奥行きの範囲が制限されると同時に疲労感が強いという結果が得られた。 (2)立体内視鏡用の立体表示・制御用ソフトウェアの開発: 2つのイメージセンサの画像から3次元ディスプレイで表示する画像を制作すると同時に本内視鏡の機構の制御用サーボモータの制御を行うソフトウェアを開発した。また、提案した立体内視鏡を将来的にナビゲーションシステムに統合し、使用可能なようにナビゲーションシステムの基礎となるソフトウェア等の開発を行った。 (3) 屈曲機構を有する立体内視鏡の考案・設計: リンク機構による屈曲機構を採用し、先端の内視鏡部からのイメージセンサとLEDのケーブルと可変輻輳角機構の制御部品と共に動作可能なように1自由度の屈曲機構の設計を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は多自由度屈曲機構と可変広輻輳角機構を備えた腹腔鏡下外科手術用立体内視鏡による、自然で立体感のある画像を医師に提供することを目的としている。しかし、本年度試作した光学系では、 光学系の設計もしくは設計コンセプトに問題があり、輻輳角が大きくなりすぎてしまい、立体感の大きい画像は実現できたが、立体視できる奥行き距離が狭く、疲労感が大きいという結果になった。 このため、内視鏡先端部の光学系の設計・試作と解決策の考案、立体表示・機構制御ソフトウェアの開発と屈曲機構部の設計のみで本年度は終了しまい、屈曲機構を製作できなかったために計画よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
自然な立体視を実現する光学系の設計製作し、可変輻輳角機構と屈曲機構を有する立体内視鏡の開発を行い、立体感と疲労感や使用感に関する評価を行う。 特に、自然で立体感のある立体画像と提供するために、基線長の大きさを含めた可変輻輳角機構の検討を行い、イメージセンサの再選定と光学系の設計を再度行う。また、光学系の改良のみでは、上記した問題を解決できない可能性があるため、2つのイメージセンサの視差画像から3次元モデルを計算し、術者の視点に合わせて、提示画像を調整し,自然な立体視を実現する方法についても解決策として検討を行う。本年度試作した光学系は視差が大きく画像の解像度もSXGAのため、高精度に3次元位置計測や3次元モデルを計算が可能であると考えられる。そして,イメージセンサの数を増やすことで視野を広げることについても検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、内視鏡の光学系の検討・試作と立体画像表示・機構制御ソフトウェアの開発で終了してしまったため、屈曲機構製作費を次年度に持ち越してしまった。 次年度においては、研究費は光学系の設計と設計した光学系を実現するためのセンサおよび光学系部品の購入、立体内視鏡製作費と研究成果発表費に主に使用する。
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