本研究では術野の限られた腹腔鏡下外科手術において、腹腔内で最適な視野の確保と広い輻輳角により広い範囲で違和感なく自然な奥行感のある立体画像を提示し、医師の負担を低減することを目的とした「多自由度屈曲機構と可変広輻輳角機構を備えた腹腔鏡下外科手術用立体内視鏡の開発」を行う。 初年度から次年度において、可変輻輳角機構を有する立体内視鏡の光学系を検討し、SXGAの解像度を持つCMOSイメージセンサによる光学系の設計を行い、可変広輻輳角機構を備えた内視鏡を開発した。そして、輻輳角の変更による立体感の評価を行った。評価実験では、立体視は自然視に近い交差法とし、開発した内視鏡の先端部を用いて、センサ間(基線長)とセンサの角度を変更することで輻輳角を変更し、変更した各角度による立体視の立体感を評価した。 最終年度は高解像度かつ細径の内視鏡開発するため、携帯電話などに使用されているMIPI インタフェースを持つ小型CMOSイメージセンサを用いた先端側方イメージセンサ型立体内視鏡の開発を行った。開発した内視鏡は先端側方に2つのフルHDの解像度を持つCMOS を有し、それぞれのCMOSセンサにFPGAボードを接続することにより、約30fpsのリアルタイムな画像の取得と立体画像表示を可能とした。しかしながら、CMOSセンサのサイズとCMOSセンサとFPGAボード間のノイズ対策のため、従来の内視鏡と同等の大きさは実現できなかった。そして、開発した内視鏡の輻輳角と解像度の変更し、人体模型に対して立体感の評価を行った。 また、本研究の過程で得られた知見と開発したカメラキャリブレーションなどのカメラ画像補正・制御プログラムにより、重畳表示用の術中リアルタイムカメラキャリブレーションアルゴリズムの提案及び手術ナビゲーションシステムの開発を行えた。
|