研究課題/領域番号 |
23700573
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野村 行弘 東京大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (60436491)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 医用画像 / 診断支援システム / 見落とし / 遠隔読影 |
研究概要 |
平成23年度は、(1)診断支援システム併用による医師の診断傾向解析、(2)認知心理学の知見(頻度効果)に基づく診断支援インターフェイス構築、(3)遠隔読影環境下での診断傾向データの収集を行った。(1)研究代表者所属施設の検診における医師の診断傾向を解析した。頭部MRAの脳動脈瘤検出では、医師・診断支援システムともにサイズの小さい病変で見落としが多い傾向が見られた。このため、診断支援システムの小病変検出性能向上を図るために、補間処理により擬似的に変化させた画素サイズと病変検出性能との関係について検討した。その結果、画素サイズを小さくすることで小病変の検出性能が向上するとともに、複数画素サイズの処理結果を統合することでさらなる検出性能向上の可能性が示唆された。一方、胸部CT画像の肺結節検出については部位毎の見落とし傾向の解析を行い、医師全体では肺門部に見落としが多い傾向が見られ、医師間では異なる傾向が見られた。(2) 病変の見落としに対する注意を促すためのインターフェイスとして、研究代表者が既に構築した診断支援サーバのログイン直後の画面に、過去に見落とした病変を提示する機能を実装した。(3) データセンタを介した遠隔読影システムに研究代表者が既に構築した診断支援サーバを導入し、多施設臨床使用による診断傾向データの収集を開始した。導入の際、診断支援サーバの将来的な処理件数増加を想定して複数マシンによるジョブ分散機能を新たに構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画のうち、医師の見落とし部位の統計モデルを用いた結果提示方法の構築について遅れが生じている。理由としては、対象とする診断支援システムのうち胸部CT画像の肺結節検出では、診断傾向を取得するために医師が入力する、システムの処理結果に対する正誤判定などのフィードバックの入力基準を臨床運用に則した変更を行ったため、新たな基準による診断傾向データの収集に期間を要した。現在、研究代表者所属施設の検診において約2,000例の診断傾向データが収集できており、解析の結果、部位による見落とし傾向に差が見られたことから、見落とし部位の統計モデルの作成に着手している。一方、頭部MRAの脳動脈瘤検出では多施設症例での適用を想定した場合、撮像範囲や描出される血管が施設・装置毎に異なることなどから、統計モデルの作成には高精度の血管抽出ならびに血管同定手法の構築など解決すべき課題があることが判明した。以上より、次年度は対象とする診断支援システムを肺結節検出に絞り、見落とし部位の統計モデルの作成、および医師の見落とし傾向を考慮した尤度計算方法の構築を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
胸部CT画像の肺結節検出における、医師の見落とし部位の統計モデルを用いた処理結果提示方法を構築する。まず、過去の処理結果に対する医師の見落としのサンプル集合より、見落とし部位の確率分布を作成する。なお、統計モデルは全医師共通のモデルと個々の医師向けのモデルとを別に作成する。さらに、作成した見落とし部位の統計モデルならびに画像特徴量に基づく識別処理で得られた尤度医師の見落とし傾向を考慮した尤度を計算する方法を構築する。見落とし部位の分布ならびに統計モデルの作成に必要な症例数、およびモデルの更新間隔について複数の運用形態を想定したシミュレーションによる検討を行い、ROC曲線の下面積による評価で各形態の得失を議論することで、臨床使用に適した作成手順について議論する。また、構築した処理結果提示方法を実装した診断支援システムを研究代表者が既に構築した診断支援サーバへの実装し、臨床使用による評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じたのは、国内学会(日本医学放射線学会)が東日本大震災の影響によりWeb開催となったこと、ならびに研究の遅れに伴う成果発表の遅れによる。次年度は、画像データを保存のための複数台の大容量ハードディスク、ならびに開発ソフトウェア等を物品として購入予定である。また、成果の発表に必要な国内外の学会参加のための旅費、学会参加費、論文校閲費、印刷費、通信費、学会誌投稿料などに使用予定である。
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