平成24年度は研究代表者所属施設の検診における胸部CT画像の肺結節検出ソフトウェアの臨床使用で医師が入力したフィードバック情報を使用して以下の項目を検討した。 (1) 医師の診断傾向のうち、見落とし部位の局在解析を昨年度に引き続き行った。2010年12月から2012年9月までの22ヶ月間に診断を行った21名の医師を対象とし、肺野領域を複数の部位に分けて部位毎の見落としを統計解析した。その結果、医師全体では両肺の肺門部に見落としやすい傾向が見られた。一方、個々の医師では肺門部以外の部位で見落としやすい傾向が示されることがあった。 (2) カーネル密度推定法を用いた医師の見落とし部位の統計モデルを作成した。医師毎に診断した症例の病変分布モデルおよび見落とし分布モデルをそれぞれ作成し、両者より計算した見落とし割合を用いてモデルを作成した。作成したモデルにより医師の見落とし部位の局在をより詳細に把握することが可能となった。 (3) 医師の見落とし部位の統計モデルおよび診断支援ソフトウェアが出力する画像特徴量に基づく病変候補の識別処理による尤度の組み合わせることで、医師が見落としやすい部位の病変候補を優先的に提示する方法を構築した。初期検討の結果、構築した方法により医師が見落としやすい部位の病変をより多く提示することができ、医師の診断傾向に応じた診断支援ソフトウェアの処理結果提示方法の実現可能性が示された。
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