研究課題/領域番号 |
23700579
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
坂本 憲児 広島大学, ナノデバイス・バイオ融合科学研究所, 研究員 (10379290)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | マイクロTAS / MEMS / 遺伝子センサ / μポンプ |
研究概要 |
本研究では遺伝子解析ツールとして注目されている遺伝子トランジスタの研究を発展させ、簡便で迅速で安価な遺伝子解析ツールにする事を目的とし、ポンプ-ゲート-センサ集積化デバイスの研究を行っている。平成23年度は「試薬の高速スイッチング手法の確立」として電界駆動型流体トランジスタの原理動作確認用試作を行った。まず電圧を加える事で液体の界面張力を変調させる原理(EWOD(electro wetting on dielectric))の確認のデバイスを作製し確認した。その後、本研究で提案している電界駆動型流体トランジスタの評価デバイスを作製した。Si素材の上に作製したマイクロ流体デバイス上に、金電極の微細加工によりEWOD発生機構を作製した。試作デバイスにて実験を行った結果、極小空間での電圧印加では電気分解による気体が発生しやすい事が判明した。そのため気体が発生した場合の対策と、発生気体を抑えるため低電圧で駆動可能なデバイスを再度試作を始めている。また平行して、遺伝子解析で行われているサンプル溶液、薬液のサンプリング手法を模擬した微量送液ポンプ集積型遺伝子センサ(Extended gate方式)を作製し、東京医科歯科大学の宮原教授の実験室で流動制御実験およびハイブリダイゼーション実験を行った。その実験により、デバイスの耐久性、駆動電圧の電圧量、送液の時間などの課題が新たに分かり、それに対応するデバイスを現在作製している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
達成度60%電界駆動型流体トランジスタのデバイスでは予定していた性能を出せなかった。この主な原因は極小空間での電気分解によるものである。本研究はマイクロ流体デバイスを用いるため、極小な流路内にデバイスを埋め込むことになる。そのため微量の気体が発生した場合でも、それが流路を塞ぎ気体がバルブとなり、流動を妨げる要因になる。ただその機構を利用しバルブ機能を持たせる可能性も出てきている(電圧発生型気体バルブ)。それに関しても新たな研究としての側面を持ち、今後の解析が必要な部分となっている。本研究テーマ内では、気体発生を低減させ気体が発生しても流動に支障がないデバイス構造に変更する事でこの問題を解決しようと考えている。微量送液制御法に関する検証のハイブリダイゼーション実験では、今回初の試みであったためデバイスの問題点が洗い出された。特にセンサ表面の洗浄工程が長時間必要であることが分かり、それに伴いデバイス電極の劣化が生じた。この問題を解決するには電極構造とその保護膜を再度検討する必要が生じている。これらの解決策は現在検討中である。そのほかにハイブリダイゼーションに関わるセンサ面の洗浄工程の詳細が分かったため、これらに対応出来るデバイスの改良という課題も出てきている。また平成24年3月に九州工業大学マイクロ化総合技術センターへ着任したため、移動の前後で実験が滞ったのも研究が進まなかった要因の一つとしてあげられる。現在、急ぎ九州工業大学での実験環境の構築を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定である電界駆動型流体トランジスタによる極微量送液制御法の構築をめざし、今年度に作製した電界駆動型流体トランジスタの問題点を改善した改良版を試作し評価する。その後、センサ‐ポンプ集積化デバイスに組み込む。その際にはハイブリダイゼーション実験で新たに生じた課題を解決するために、電極部サイズの変更と、デバイス構造の再検討、サイズ縮小化を行う予定である。また制御速度を高速化する研究も同時に進める。電界駆動型流体トランジスタのマイクロ化とその制御を行うことで、秒単位以下の送液と停止の流動制御が繰り返し可能なスイッチングデバイスの構築を目指す。また下半期は塩基解析を目指したデバイスを試作する。塩基配列を決定するためには4種の試薬と洗浄液を交互に流す必要があり、ハイブリダイゼーション実験以上に送液性能と耐久性が求められる。このため高速送液制御と長時間駆動を目指したデバイス構造を考案し試作する。試作デバイスは東京医科歯科大学にてハイブリダイゼーションおよび塩基伸長反応測定の実験を行う予定である。また電気浸透流のみの制御では不可能な場合も想定して、電気泳動型ポンプを組み込む計画も並行して予備実験をすすめ、場合によっては電気泳動型ポンプへの切り替えを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
秒単位の流動制御をミクロサイズで行うために、その挙動を撮影するための高性能なビデオカメラを導入する予定である。また予備実験を行うために、遺伝子センシングで用いるバッファー溶液、洗浄液などを購入し、事前の送液制御実験を行う。またサンプルへ外部から初期試薬を導入するために、送液チューブ、コネクタ類を購入し、実験に備える予定である。
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