本研究では遺伝子解析ツールとして注目されている遺伝子トランジスタの研究を発展させ、簡便で迅速で安価な遺伝子解析ツールにする事を目的とし、ポンプ-ゲート-センサ集積化デバイスの研究を行っている。 本年度では「試薬の高速スイッチング手法」の中心となる電界駆動型流体トランジスタに関して、前年度に判明した気泡対策を行った。昨年度の試作デバイスにて実験を行った結果、極小空間での電圧印加では電気分解による気体が発生しやすい事が判明した。気泡と駆動電圧の関係と、発生する気泡の回避方法を検討した結果、高速駆動のためには気泡を利用する必要性が判明した。これを元に発生気泡をバルブとして用いる新たなデバイスを考案した。電界駆動型流体トランジスタでは気液界面の張力を制御しゲート機能を発生させているが、ゲート部に低電圧駆動でEWODの効果が発生する機構を作ると共に、電圧を一時的に上げる事で気泡バルブを発生させ送液を止める働きを持たせる。また発生した気泡は疎水膜のマイクロピラー構造体の底面部に形成するバイパス排気構造により排気し、繰り返し送液可能なデバイスにする。この新しい気泡利用電界駆動型流体トランジスタの基礎計算と設計を行い、これを元に現在デバイスを作製中である。 さらに送液および測定制御の研究を進めた。遺伝子解析のための送液データとその測定結果の解析から、目に見えないレベルで発生している電気分解の気泡を、遺伝子トランジスタがノイズとして拾う問題が判明した。このため閾値を用いる事で測定データの取得を行う方法を検討した。 これらの研究成果は第29回センサ・マイクロマシンと応用システムシンポジウムにて発表を行った。
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