研究課題/領域番号 |
23700581
|
研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
遠藤 怜子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (40433982)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 超音波NO産生 |
研究概要 |
本研究の目的は超音波NO産生による腫瘍縮退効果の検証であり、平成23年度は、(1)NO産生測定系の確立、(2)腫瘍モデルを作製してNO測定時期の検討を以下の通り行い、腫瘍を対象とした超音波NO産生測定実験の準備を整えることができた。(1)一酸化窒素測定装置を購入して、正常ラット大腿筋組織の超音波NO産生量を実時間的に測定できることを確認した。500KHzの連続波超音波を強度1W/cm^2で照射すると、超音波照射前の1μMから超音波照射後10分後には1.5μMまで線形に上昇した。過去の実験的検証では、ラット皮下腫瘍組織6例においてNO産生量は超音波照射前8μから超音波照射後30分の間に極大値12μMまで上昇した。今回の結果から、正常組織においても超音波照射によるNO産生量の上昇を確認できた。その上昇量は腫瘍組織よりも小さかったが、超音波NO産生による腫瘍治療を行う上で、患部腫瘍周囲おけるNO産生が正常組織に与える影響を考慮する必要があるものと考えられた。(2)腫瘍組織が成長すると壊死巣が生じ易くなる。本実験では電極法を用いたNO測定を行うため、電極先端が壊死領域にあるか実質領域にあるかが測定結果に大きな影響を与える。本研究では、一般的に広く用いられているラット脳腫瘍細胞(9L-gliosarcoma)を使ってラット大腿皮下腫瘍モデルを作成し、NO測定に適した成長期を検証した。その結果、腫瘍細胞を移植してから10日後から25日後が電極法を用いた測定に適した期間であることを確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H23年度では超音波NO産生の測定実験系を確立することができたが、当初の目標である腫瘍を対象とした超音波NO産生量の測定には至らなかったため、「やや遅れている」とした。しかしながら、得られた成果により、今後の動物実験をスムーズに遂行できるものと考えられる。更に腫瘍組織と正常組織におけるNO産生量の違いなど新たな知見が得られるなど一定の成果が得られたものと考える。計画が遅れた大きな理由に関しては、研究者がH23年7月から11月末まで病欠していたことが大きな理由と言える。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の目的である超音波NO産生による腫瘍縮退効果を検証するためには、腫瘍におけるNO産生量と超音波照射条件との関係を明らかにし、超音波照射による腫瘍縮退効果を確認しなければならない。H23年度に確立したNO測定実験系を基に、腫瘍移植10日後から25日後の腫瘍を対象として、以下の通り、超音波照射条件とNO産生量との関係を調べ、腫瘍縮退効果を検証する。検討する超音波の照射条件は、周波数を500kHzの連続波超音波のみとする。(1)この超音波に関して、超音波強度(0.5W/cm^2, 1.0W/cm^2, 1.5W/cm^2)によるNO産生量の差を検証する。各強度の超音波照射時間(1時間以内)によるNO産生量の動態を明らかにする。(2)NO産生量が最も多くなる超音波照射条件に対して、照射頻度(1日から3日おきに5回)を変えた際のNO産生量の変化を検証する。同時に、第一回目の照射日から3週間後まで腫瘍サイズの変化を確認し、非超音波照射群の腫瘍成長と比較する。最も腫瘍縮退効果が得られる超音波照射頻度とその際のNO産生量の変化を導出する。(3)本研究ではNO測定が重要な要素であるが、電極法を用いるため、電極の刺入による腫瘍成長への影響が考えられる。そこで、電極による侵襲を排除した超音波照射単独による腫瘍縮退効果の確認によって、腫瘍における超音波NO産生による腫瘍縮退効果の検証するものとし、ここまでを本研究の目標とする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当該年度では、約143万円の研究費が生じた。NO測定実験系を確立するために、一酸化窒素測定装置約80万円を購入し、腫瘍モデルを作成するために、腫瘍細胞株GS-9L約10万円、および腫瘍成長を記録するためのデジタルカメラと撮影用ワゴンで約10万円、その他、動物や実験用消耗品に約40万円を使用した。今後の研究の推進方策で(1)(2)(3)で記載した通り実験を遂行するためには、以下の費用が必要となる。腫瘍モデル作製のための動物の購入料、飼育料として約50万円が必要である(研究者が腫瘍細胞を注射すると生着率は60%であるため、動物の購入匹数は100匹程度と考えた)。また、学内の動物実験施設使用料として約30万円が必要である。NO電極は消耗品であり、一本で6回の計測に使えると考えて約60万円が必要である。その他、一般消耗品と成果報告のための公刊雑誌への投稿、学会での調査研究のために約50万円を使用する。
|