本研究は超音波NO産生による腫瘍縮退効果の検証を目的としており、平成23年度には正常組織を用いて超音波NO産生測定のための実験系を確立している。平成24年度は、本実験系を用いて、腫瘍に対してNO産生量と超音波照射条件との関係を明らかにすることを予定していが、NOは腫瘍成長に関与する血管新生因子の一つであり、作用の一つとして血管透過性を高め、血管内の高分子が血管外に漏出することが知られているため、本年度は超音波NO産生が血管透過性に与える影響を調べることを優先して行った。 9Lラット脳腫瘍モデルにEvans Blue(EB)を尾静脈から投与して、5分後から60分間、500KHzの超音波(Duty50%)を強度0.7W/cm^2で照射した。その結果、腫瘍部および腫瘍周辺の正常組織のEB濃度は、照射終了15分後では非照射時よりも低く、照射終了60分後に非照射時よりも高くなった。これは、照射終了後15分では超音波NO産生の影響で血管透過性が亢進しており、血管外に漏出した高分子が血中に戻ってしまうが、超音波NO産生は一時的な上昇であるために、照射終了後60程度では血管外の高分子が血中に戻ることができなかったためと考えられる。一方、過去の知見から、RT2ラット脳腫瘍に超音波を1時間照射すると超音波照射中に一時的にNO産生量は高まり、照射終了後10分程度で照射前と同程度になる。本研究では、超音波NO産生が一時的な上昇であることが、高分子の血管透過性の検証からも示唆された。
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