研究課題/領域番号 |
23700589
|
研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
國領 大介 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, 研究員 (20508543)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 薬剤送達システム / 磁気共鳴画像 / 加温治療 |
研究概要 |
造影剤ならびに抗がん剤を含有する多機能温度崩壊型リポソーム担体と,MRI(磁気共鳴画像)ガイド下で,超音波を中心とした局所加温技術を組み合わせた,薬剤送達イメージング温熱治療システムの実現に向けて,MRIを用いた定量化・高感度化撮像法・処理法の開発・改良と,MR対応超音波プローブの作成・改良のための調査を行った.定量化・高感度化撮像法・処理法の開発・改良に関しては,まず高速T1定量画像化法の一種であるLook-Locker法を用い,腫瘍ならびに正常組織におけるリポソーム担体の薬剤動態を高速かつ定量的に捉えた.リポソーム担体の投与前から投与72時間後までの腫瘍領域ならびに正常組織のT1値を取得したところ,腫瘍領域のT1値は,投与直後よりなだらかに減少し,投与4~12時間で最も減少した.一方,正常組織である肝臓・腎臓のT1値は,投与直後に最も減少し,その後徐々に投与前のT1値に戻り始めた.このことから,腫瘍と正常組織の薬剤動態が異なることを定量的に捉えられた.また,複数のフリップ角を用いて撮像した画像を組み合わせてT1値を求める可変Flip Angle法を用い,水ファントムのT1値を計測したところ,30度以下のフリップ角を用いた画像を使用することで,従来法で得たT1値と大きな誤差がなかった.Look-Locker法,可変FlipAngle法ともに,従来法に比べ,取得にかかる時間を大幅に短縮できた.超音波プローブの作成・改良に関しては,研究代表者の所属研究チームが共同研究において使用した超音波プローブを参考に,作成・改良に向けた検討を行った.現状のプローブは大部分が非磁性であったものの,MR装置内での使用を考慮していないため,MR装置内での使用を可能にするためのサイズの検討ならびに使用素材を再検討した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MRIを用いた定量化・高感度化撮像法・処理法の開発・改良に関しては,Look-Locker法ならびに可変FlipAngle法を用いることにより,腫瘍モデル動物においても,短時間で定量的な変化を捉える事が出来る目処が立っており,順調に進捗していると考えられる.また平成24年度に予定していたリアルタイム温度変化・治療可視化システムの一部である,MR温度分布画像化法に関する研究も進んでいる.MR対応型超音波プローブの開発・改良に関しては,当初の計画よりはやや遅れているが,改良に向けた準備を行い,次年度での完成を目指している.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度,改良を行ったMRIを用いた定量化・高感度化撮像法・処理法に関しては,リアルタイム温度変化・可視化治療システムの構築を構築するために,MR温度分布画像化法と組み合わせたシステムの開発に取り組む.加温用超音波プローブの開発に関しては,平成23年度に行った検討に基づき,プローブの作成・改良を行う.なお超音波プローブが完成するまでは,自作の温水還流装置を用いて局所加温を行うことにより,開発したシステムの検証を行う.
|
次年度の研究費の使用計画 |
超音波プローブを作成・改良するための部品類の購入,ならびに構築するリアルタイム温度変化・可視化治療システムの検証のための実験用動物,薬品を購入する予定である.
|