研究課題/領域番号 |
23700589
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研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
國領 大介 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, 研究員 (20508543)
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キーワード | 薬剤送達システム / 磁気共鳴画像 / 加温治療 |
研究概要 |
本研究は,造影剤ならびに抗がん剤を含有する多機能温度崩壊型リポソーム担体と,MRI(磁気共鳴画像)ガイド下において,超音波を中心とした局所加温技術を組み合わせた,薬剤送達温熱治療システムを構築することを目的とし,平成24年度は,MRIを用いた定量化・高感度化撮像法・処理法の改良・最適化を実施するとともに,MR温度分布画像化法を含むリアルタイム温度変化・治療可視化システムの構築を開始した.また,MR装置内で使用する超音波プローブの改良の検討を行った. 定量化・高感度化撮像法・処理法の改良に関しては,前年度使用したLook-Locker法や可変FlipAngle法に加え,複数の繰り返し時間TRとエコー時間TEを使用して撮像するRAREVTR法を使用・パラメータの調整を行うことで,モデル動物に移植した腫瘍領域のT1値およびT2値を従来法に比べ短時間に取得することができた.またリポソーム担体の投与の有無,局所加温の有無の違いによる,T1値,T2値,および拡散強調画像化法により取得したADC値(見かけの拡散係数)の変化を比較したところ,リポソーム担体を投与し,局所加温した場合のT1値が,その他の場合に比べ,短縮したことが確認できたことから,T1値がリポソームの放出範囲や治療範囲の定量的な評価に有用となることが示唆された. リアルタイム温度変化・治療可視化システムの構築に関しては,ソフトウェア部分の構築を開始し,加温前後のMR位相分布を使用するMR温度分布画像化法を用いた温度変化分布と加温後のT1強調画像およびT1値マップとの実時間での重畳・比較方法を検討した. 超音波プローブの作成・改良に関しては,現状所有しているプローブのMR装置内での固定方法などの使用法を検討するとともに,より最適なプローブサイズの検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MRIを用いた定量化・高感度化撮像法・処理法の改良に関しては,平成23年度に検討したLook-Locker法ならびに可変FlipAngle法を含む,種々のMR撮像法を組み合わせることにより,in vivo実験においても,腫瘍内への薬剤集積や加温後の信号変化を有用な撮像時間で定量的に捉える事が出来る目処が立っており,順調に進捗していると考えている. 加温前後のMR位相分布情報を用いたMR温度分布画像化法により,局所加温中の温度変化分布を取得できることは確認しており,薬剤集積や加温後の信号変化の情報と組み合わせることにより,実時間での温度変化・治療可視化システムのソフトウェア部分の構築が可能になると考えている.また,超音波プローブの改良に関しては,当初の計画よりはやや遅れているが,MR装置内で使用する固定具の作成・改良すること,またサイズの最適化を実施することで,平成25年度中の温度変化・治療可視化システムの完成を目指している.
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き,MRI定量化・高感度化撮像法・処理法の改良・最適化を実施しつつ,MR温度分布画像化法と組み合わせたリアルタイム温度変化・可視化治療システムのソフトウェア部分の完成を目指す.また加温用超音波プローブの改良も引き続き実施するとともに,超音波プローブが完成するまでは,自作の温水還流装置を用いて局所加温を行うことにより,開発したシステムの検証を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
超音波プローブを作成・改良するための部品類の購入,ならびに構築するリアルタイム温度変化・可視化治療システムの検証実験のための実験用動物・薬剤購入代,組織染色費用代,および学会発表ならびに研究打ち合わせのための旅費に使用する予定である.
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