研究課題/領域番号 |
23700590
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
植松 美幸 国立医薬品食品衛生研究所, 医療機器部, 主任研究官 (10424813)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 治療支援 / ナビゲーション |
研究概要 |
治療で実現すべきは、医師が手術を安心して遂行できるのはもちろん、患者が安心して手術を受け、術後を豊かに過ごせることである。これまでの研究では、外科手術中の医師の判断を支援するシステム開発を行ってきた。そのひとつである手術ナビゲーションシステムは外科医の判断が経験や勘によるものでなく、手術中の計測データに基づいた情報提供がなされるものである。これは手術の成功率の向上につながると考えられるが、患者の側から立ってみると、支援によるメリットを享受している感覚は得難いと思われる。そこで、本研究では主に手術を受ける患者に対する直接的な支援システムを立案し、医師、患者双方にとってのより質の高い手術フローを打ち立てることを目的とした。初年度の目標は新たに開発するシステムの仕様検討とした。まず、システム開発の上での条件として, 1)患者が従来では得られない情報を享受できること、 2)医師にとっても有用となりうることをあげた。 患者にとっての不安は、病気やその過程での治療中に自分の身に起こるであろうことに対して、見通しがつきにくいことにある。これは他人の情報を収集しても自身の状況に置き換えて、具体的な治療のイメージを掴むのが難しいためである。治療の過程の中で自分が今どういう段階にあるのか、どうなるのかという予測が提示できれば、患者の治療に対するイメージ増強に役立ち、治療に対するモチベーション向上につながると考えた。そこで、具体的な方法として、従来の医用画像を用いたナビゲーションシステムを中心とした支援を用いる一方で、画像のような視覚的な情報では得られ難い情報(体性感覚などの応用)を呈示するシステムの開発を行っていくこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
システム開発のための条件・仕様の設定、実現するための要素技術の洗い出しなどを行い、プロトタイプ開発に向けた準備を行った。患者の個人差をどのように抽出、制御し、どういう形でのフィードバックが効果的かについてはさらに検討を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では対象を乳房再建術のひとつである、深下腹壁動脈穿通枝皮弁(Deep Inferior Epigastric Perforator: DIEP flap)を用いた治療と考えていた。乳房を対象にした手術は患者の審美的満足度が術後 QOL に大きく影響する。このような症例の場合は、他の人の例を参考にしても自分の状況に反映させづらく、術前、術後での患者のイメージにズレが生じる可能性がある。そのため、患者のイメージ増強に役立つシステムがあれば治療全体の流れとしての貢献度が高いと考えたためである。しかしながら、平成23年度のシステム検討において、視覚的な情報支援以外、触覚をはじめとした体性感覚などをフィードバックする情報呈示は他の治療にも役立つ。そのため、必ずしも審美的満足度の向上につながることへの貢献にこだわる必要はないと考えた。医師、患者双方にとって役立ちそうな支援システムとして、ユーザが予測した感覚と実際との感覚との尺度にズレを抽出し、呈示する方法で進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品は患者を模擬するためのファントムおよび実験系の評価用治具の作製などに使用する。旅費は成果を発表するための国内学会発表のための旅費などに使用する。その他、学会参加費や実験を行う際の計測器移動に伴う輸送費などに使用する。
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