研究課題
本研究では治療の一連の流れを医師・患者ともに理解しやすくなるトータルシステムの流れ構築を目指している.24年度は大動脈瘤のステントグラフト留置術について,剛体モデルを対象にした生体外シミュレーションを行った.これをもとにした医師との議論から,患者固有の大動脈形状に対して適切なステントグラフトの選択をする上で,各医師が頭の中で考えてきたことを客観的に理解する方法の提示はできたと考えられた.一方で,定常流や拍動流の条件下でステントグラフトの回転はどのように変化するかについて理解できるシステムがほしいとの要望を受けた.25年度は弾性を有するモデルとしてシリコーンを材料とするファントムを作製し,血管内でのステントグラフトの留置の様子を可視化させるシステムを開発した.血管が透明になったことで,内部でのステントグラフトの展開具合を知ることができる.治療中にC-arm CTで示される2次元の画像では把握しづらい血管壁へのステントグラフトの押し込みの様子やステントグラフトの開窓部が血管の分枝部に合うような留置法を確認できるシステムとなった.拍動流の再現は今後の課題だが,拍動流が存在する中での留置が実現できれば,より実際の治療の状況を体感しながら目で見て確認できるこれまでにないシステムとなると考えている.さらに手術中のナビゲーションの表示法として,従来のモニタに表示された結果を目で追いながら確認する方法から,iPadを患者の身体の上でかざしながら対象血管を探索する方法の提案を行っており,手術中の医師が使いやすいシステムの一案とした.また,手術中のデジタル情報を統合的に収集するシステムも追加した.治療流れの中で,術前・術中・術後といった部分をシステムで補いながら,医師・患者双方の理解を増強する仕組みをトータルで構築できた.今後は実際の利用を通して,より使えるシステムとして改良していく.
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Advanced Biomedical Engineering
巻: 2 ページ: 101-106