本研究では、生体内でホスファチジルセリン(PS)とインテグリンavb3とを橋渡しする役割を有し、アポトーシス細胞の貪食に重要なタンパク質であるMFG-E8(Lactadherin)を利用することにより、本邦で臨床使用可能なPSを気泡殻に含有する微小気泡(超音波造影剤:Sonazoid)からインテグリンavb3に特異的に集積する分子標的気泡の作成が可能か否かについて検討した。 昨年度までの検討から、Lactadherinの仲介(Sonazoid-Lactadherin複合体の作製)により、インテグリンavb3発現細胞(HUVEC)に対するSonazoidの接着性が有意に上昇することが明らかとなった。また、Lactadherinと複合体を形成しても、Sonazoidの超音波造影剤としての音響特性は障害されないことも明らかとなった。 本年度は、HUVECとLactadherinの結合特異性について、solid-phase ELISAにより評価を行った。HUVECを抗インテグリンavb3抗体あるいはcRGDペプチドで前処理することで、LactadherinへのHUVECの接着が有意に減弱したことから、LactadherinはRGD領域を介してHUVEC上のインテグリンavb3と結合することが明らかとなった。 本研究期間全体を通し、Sonazoid-Lactadherin複合体は作製が非常に簡便な、インテグリンavb3に対する特異的な分子標的気泡となり得る可能性が示唆された。インテグリンavb3は腫瘍血管や新生血管などの内皮細胞に多く発現しており、Sonazoid-Lactadherin複合体は腫瘍血管や血管再生療法による新生血管に対する超音波分子イメージング用造影剤となり得る可能性が示唆された。
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