本研究の第一の目的は、高速度X線透視装置と三次元/二次元画像位置合わせを用いて変形性膝関節症(膝OA)患者の歩行中の動態解析を行い、正常膝の動態と比較することである。第二の目的は、膝OA患者に運動療法を行い、施行前後での膝動態の変化を計測することにより、運動療法が歩行中の膝動態に与える効果を明らかにすることである。膝関節の回旋パターンと関節接触部位の変化に注目することにより、変形性膝関節症の病態、運動療法の効果の機序やOA進行予防の可能性を関節動態の面から明らかにする。 初年度は、健常人10人を対象に歩行動作とスクワット動作の三次元膝関節動態を比較した。歩行時の膝関節動態は、従来行われていたスクワット動作時の関節動態と比べて大腿骨の回旋角度が有意に少なく、また回旋中心がより外側にあることを示した。また歩行時の関節接触部位はスクワットとは異なること示し、歩行動作が関節軟骨に与える負荷はスクワットとは異なることを示した。本研究の結果は、千葉スポーツ医学研究会雑誌にて論文を発表した。 次年度は、健常人5人と、膝OA患者5人を対象に歩行動作とスクワット動作を記録し、膝関節動態を比較した。変形性膝関節症患者では、健常人と比べて脛骨の前方偏位と内旋がみられることが明らかになった。この傾向は歩行、スクワットともに同様だった。本研究の結果は第39回日本臨床バイオメカニクス学会、第1259回千葉医学会整形外科例会および2012 World Congress on Osteoarthritisで発表した。 本年度は、膝OA患者を対象に運動療法前後での膝関節動態を計測する予定だったが、患者リクルートに問題があり、計測ができなかった。前年度までの結果を英文誌に投稿中である。
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