研究課題/領域番号 |
23700603
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
高橋 真 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 講師 (50435690)
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キーワード | 心拍変動周波数解析 |
研究概要 |
本研究はヒトの運動時および運動終了後の心臓自律神経活動,特に心臓迷走神経活動を推定できる唯一の方法である心電図RR間隔の変動をWavelet周波数解析することで得られる高周波成分を指標とし,ヒトの運動時および運動終了後の心拍調節機序を再検討することである. 昨年度は健常者を対象に静的運動時の心拍数調節の心臓迷走神経の役割について検討し,異なる運動強度での心拍数と心拍変動の高周波成分の経時的変化の結果より,運動開始時から100~120beats/min前後までの心拍数調節に心臓迷走神経活動が運動強度依存的に調節していることを示した.しかしながら,心拍変動の高周波成分は主に迷走神経活動を反映していることは明らかではあるものの心臓交感神経等の関与は否定できない. そこで,本年度は心臓交感神経のみ選択的に障害されているが,心臓迷走神経は障害されていない頸髄損傷者を対象とすることで前述の問題の解決を行った. 異なる運動強度での2分間の静的運動中の心拍数とRR間隔変動の高周波成分の経時的変化を検討した結果,健常者と同様に高強度での運動時に心拍数がより早く大きく増加し,それと対応するようにRR間隔変動の高周波成分はより早く大きく低下する傾向が認められた. 頸髄損傷者の運動中の心拍数調節は心臓迷走神経のみによって制御されていることから,昨年度の研究成果において健常者で確認された運動中の心拍数調節における心臓迷走神経の役割を裏付ける知見が得られた.すなわち,運動開始時から100~120beats/min前後までの心拍数調節に心臓迷走神経活動が運動強度依存的に調節していることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究によって,静的運動時の心拍数調節における心臓自律神経の役割について,新たな知見を得た. 現在,動的運動時の呼吸状態の調整方法,心電図RR間隔に加えてPP間隔計測方法の確立を進めている. 最終年度となる次年度は動的運動時の心拍数調節について,研究を進める予定であり,ここまでの研究計画はおおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今年度までに得られた成果をもとに,最終年度である次年度は,心電図PP間隔変動の高周波成分を指標に,自転車エルゴメータを用いた動的運動中および運動終了後の心臓自律神経による心拍数調節の検討を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度の発注物品のうち受注後生産の物品の納入が遅れたため,未使用額が発生したが,次年度の納入される予定である. 次年度の研究予算は主に消耗物品費,図書,国内外学会出張旅費として使用予定である.
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