研究課題/領域番号 |
23700605
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
森本 陽介 長崎大学, 大学病院, 理学療法士 (40534409)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 筋萎縮 / 温熱刺激 / 低強度運動 |
研究概要 |
本研究では筋収縮運動の強度に着目し,温熱負荷と筋収縮運動の併用がラット腓腹筋の廃用性筋萎縮の進行におよぼす影響を検討することである.実験動物には8週齢のWistar系雄性ラットを用い,対照群,廃用性筋萎縮を惹起させる目的で2週間のHSを行うHS群,HS期間中に温熱負荷を実施する温熱群,HS期間中に低強度の筋収縮運動を実施する低強度群,HS期間中に温熱負荷と低強度の筋収縮運動を併用して実施する温熱+低強度群,HS期間中に高強度の筋収縮運動を実施する高強度群,HS期間中に温熱負荷と高強度の筋収縮運動を併用して実施する温熱+高強度群に振り分けた.温熱負荷は約42℃の温水浴内に60分間ラットの後肢を浸漬する方法で行った.筋収縮運動は経皮的に電気刺激する方法で行い,刺激条件は周波数50Hz,パルス幅250μsec,実施時間20分とした.なお,刺激強度として低強度の場合は2mAとし,高強度の場合は4mAとした.いずれも3日に1回の頻度で実施した.試料は腓腹筋浅層部と深層部を供した.その結果,深層部のタイプI線維では,対照群と比較するとすべての実験群で有意に低値を示し,HS群と比較すると低強度群,温熱+低強度群,高強度群,温熱+高強度群が有意に高値を示した.次に,深層部のタイプIIa・IIb線維,浅層部のタイプIIb線維では,対照群と比較するとすべての実験群で有意に低値を示し, HS群と比較すると温熱+低強度群と高強度群が有意に高値を示した.深層部,浅層部ともに対照群とHS群の間に有意差は認められず,この2群に比べ温熱群,温熱+低強度群,温熱+高強度群は有意に高値を示した.以上のことから,廃用性筋萎縮に対して温熱負荷と筋収縮運動を併用する際は,低強度運動の方が高強度運動より効果的であることが示唆され,今後はステロイド筋症ラットに対し,温熱刺激と低強度運動の併用が効果的であるかを検討する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの自験例において廃用性筋萎縮に対して低強度の筋収縮運動と温熱刺激の併用が有用であることは明らかになっていたが,低強度の筋収縮運動のみでの効果は検討できていなかった.そこで,今年度はこの点に関する基礎データを得る目的で実験を行い,これまでの結果と比較検討した.今回の結果から、低強度の筋収縮運動よりも温熱刺激を併用した方が効果があることが明確となり,次年度からはステロイド筋症に対するこれらの影響を検討する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果から,廃用性筋萎縮に対する筋収縮運動と温熱刺激の併用療法については運動強度を考慮する必要があることが示唆されており,この知見を一つのエビデンスとして今後は,ステロイド筋症モデルラットに対して低強度の筋収縮運動と温熱刺激を単独と併用で負荷した場合の予防効果実験を推進していく予定である.なお,所属研究室には来年度real time PCR装置が導入される予定であることから,上記の点に影響をおよぼす可能性のある分子の動態についても敏速かつ円滑に解析が進展するのではないかと考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
実験用ラット50匹125000円,ステロイド剤10個50000円,モノクロナルmyostatin抗体1個80000円,ABC Elite kit 2箱100000円,電気泳動用ゲル5箱105000円,myostatin ELIZA kit 2個160000円,実験用一般薬品80000円,実験消耗品100000円,国内成果発表旅費100000円,海外成果発表250000円,謝金等50000円.合計1200000円.
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