音声のホルマント情報を用いて,話者の調音状態を視覚的にフィードバックする発話訓練システムの開発を目的として,最終年度は以下のような研究を行った。 ◯声道形状表示ツールの作成:声道形状表示モデルには,P.Ladefoged(1978)による実験的なモデルを採用し,これまでの研究において作成しているリアルタイム音声特徴ベクトル推定エンジンによって出力される高精度ホルマント情報を用いたリアルタイム声道形状表示ツールを作成した。 ◯声道形状表示ツールの動作検証:ATR母音発声MRIデータを用いて,音声情報から推定される声道形状とMRI画像情報の比較を行ったところ,声道の詳細な形状は個人によって異なるが,母音毎の声道狭め(調音)位置が両者で一致する傾向が確認された。また,成人男女性各75名の単母音音声資料を用い,推定される声道断面の平均距離その標準偏差を求め,男女の各母音毎に比較を行った。性別による声道長による補正を行った結果,MRIデータによる検証結果と同様に,母音毎の調音点が一致する傾向が見られた。 以上の結果から,本年度作成したツールは母音の発話において,声道形状(調音状態)を表現可能であると判断し,発話訓練ソフトウェアに統合し,聾児の発話訓練にて試用した。その結果,口唇部分の計算式において,話者の性別・年齢層における正規化が行えていない事から,特に子どもの発話において,その変位にばらつきが出ることが確認された。
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