平成24年度は前年度に構築した3Dバーチャル把持運動システムを改良し、空間上の物体と視覚情報が矛盾した視覚的歪みを生じさせる事の出来るシステムを開発した。本システムを用いて視覚的運動予測に基づく重さ知覚(重さの感じ方)と運動学的把持特性を調査した。視覚遅延の増加に伴って、挙上する物体が重く感じることを明らかにした。視覚情報の運動感覚における役割について明らかにするために重要な研究成果であると考えられる。工学的にも、力覚エフェクトの増強に効果的なヒューマンインターフェイスの開発や視覚‐力覚の機能回復といったリハビリテーションへの応用に発展可能と考えらえる。また、国内外の研究発表を通して、研究成果の発信と今後の研究の発展につながるフィードバックを得ることができた。 研究期間全体を通して視覚的運動予測と触覚的運動予測に基づく運動予測の特徴を明らかにするために、脳活動を混乱させる非侵襲性手技である経頭蓋磁気刺激法(TMS)、触覚提示ロボット、バーチャル3次元空間を用いて研究を行った。その結果、視覚情報と運動学習・機能を研究するために有用で斬新な3Dバーチャル触力覚提示システムを開発することに成功した。さらに、開発したシステムを用いて、視覚的運動予測に基づく運動学習における運動皮質の興奮活動と運動力学的な把持運動の特性に関する基礎的な知見を得ることができた。今後は、開発した本システムを空間的に拡張することによって、広い空間における運動学習の研究と現実的なリハビリテーション応用への発展が期待される。
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