本研究では、脳血管障害後、早期からの運動療法介入(本研究ではトレッドミル運動)が梗塞巣や梗塞周辺部(通称ペナンブラ領域)、身体活動全体に及ぼす影響を検討することを目的とした。脳梗塞は、一般的に広く国際的に使われている塞栓糸を使用した左中大脳動脈閉塞・再開通モデルを使用した。4-0ナイロン糸を左総頸動脈から左内頸動脈、左中大脳動脈分岐部まで挿入し、90分間塞栓糸を固定し血管閉塞した。その後、塞栓糸を抜き去り血流再開を行った。作成翌日に、無作為にトレッドミル運動群・非運動群と分け、運動群は毎日20分間トレッドミル運動を行った。また、術後毎日運動機能評価と神経学的評価を実施した。運動開始一週間後より運動群の方が非運動群よりも身体機能の改善が良好にみられ、28日後有意に改善した。梗塞巣周辺部でも運動群の方が非運動群に比べて有意に神経栄養因子ミッドカイン増加した。そのため、ミッドカインと神経修復の関与を検討するために、ミッドカインのノックアウトマウスを使用し、脳梗塞(開頭し末梢中大脳動脈を電気メスで凝固閉塞した)を作成したところ、ミッドカインノックアウトマウスは野生型マウスと比較して、脳梗塞巣体積に関しては、有意差がみられなかったが、反応生アストロサイトや活性型ミクログリアの発現が少ない傾向にあった。前述したラットの梗塞作成後運動を行った群では有意にミッドカインの発現が早期に増加しており、梗塞周辺部の修復にミッドカインの関与が示唆された。しかし、ミッドカインの発現機序や発現作用は、未だ不明な点が多く、今後ミッドカインノックアウトマウスを使用しての更なる解明が必要である。また、何故早期からの運動介入により神経栄養因子が増加するのか、また他の神経栄養因子との関与も含めて更なる検討が必要である。
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