研究課題/領域番号 |
23700617
|
研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
石岡 俊之 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 講師 (50548914)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
キーワード | 内側前頭前野 / モラル判断 / 情動記憶 / 行動神経科学 / リハビリテーション |
研究概要 |
本年度は,内側前頭前野損傷を対象者とする神経心理学的研究を実施するための準備段階として健常者に対する精神物理学的研究課題を実施した. 一つ目は,内側前頭前野前方部との関連が報告されているモラル判断に対する神経心理学的研究課題作成を目的として同一環境下で立場の違いによっての行動変容を捉えられるモラル課題を作成し,健常者に対して検討した.方法は,対象を作業療法学科の学生とし同じ環境条件下でセラピストとして,または患者(その家族)の立場の違いでどの様に対応するかを判断させた.結果,健常者では立場の違いによって判断が異なり行動を変容させることがわかった.この様な対応が一貫していない矛盾した結果は,社会生活を円滑に営むために必然となる矛盾と捉えることができる.また,この行動変容は,個人の経験則からよりも医学的知識・職業倫理観など習熟度が関係していることが示唆された.そのため,今回の課題が道徳観,倫理観に即して対応を変容させる能力の指標として応用できると考えられた. 二つ目は,内側前頭前野後方部損傷者に対する神経心理学的研究課題として文脈記憶への情動の覚醒度や情動価の違いが及ぼす影響に対して文献研究を行った.その結果を踏まえて標準化された情動刺激を異なる場所と時間で記銘させ,刺激の再認時に場所と時間の文脈記憶も確認できる課題を作成した.次年度に健常者および内側前頭前野後方部損傷者にて課題の妥当性を検証し課題の精度を高める.また,fMRIによる脳機能画像研究課題として応用可能となるように改訂していく.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した「研究の目的」を達成するために本年度は,内側前頭前野の前方および後方の領域と関連した神経心理学的研究の準備段階として課題作成に着手した.予定通り前方領域の課題として「モラル判断課題」を作成し,健常者に対して実施し内側前頭前野損傷者への応用が期待できるものとなる目処がつけることができ計画通りに進んだ.また,後方領域の「情動が及ぼす文脈記憶課題」に関しては,文献研究を実施し,課題作成を進めている.作成している課題は,脳機能画像研究にも応用できるように検証後,改訂する必要がある.予備実験として内側前頭前野損傷者に実施することができなかったが概ね計画通りに進行しているといえる. 直接的な研究成果ではないが,脳機能画像研究の成果として査読付き論文が2件掲載された.
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,神経心理学的研究課題に対して新たな文献研究を追加しながら対象者への負担が最小限となるように手順を確立しデータの取得を開始していく.また,fMRIの課題の作成も並行して進行していく予定である.平成25年度には,神経心理学的研究およびfMRIによる研究成果をまとめ,内側前頭前野の前方と後方の領域の機能の違いを解明していく.その後の計画として内側前頭前野の損傷者に対するリハビリテーションへの応用に向けて評価方法の標準化へ取り組む予定である.
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,神経心理学的研究課題として手順を確立していく.また,fMRIの課題の作成も並行して取り組んでいく予定である. 平成23年度の残金も活用し,研究環境の整備,研究協力者への謝金を中心に執行していく予定である. 物品購入として計画を遂行するために必要な課題提示装置およびデータ解析に必要なソフトウエアの購入を予定している.また,適切なデータ管理を行うための電子記憶媒体の購入を予定している. 人件費・謝金として,研究協力者への謝金として計上し,ている. 旅費としては,データ収集に要する施設への旅費,東北福祉大学藤井俊勝教授との研究相談に必要な旅費(埼玉・仙台間),および国内学会参加費(第36回日本神経心理学会:東京)を計上している.
|