研究課題
本年度は,神経心理学的研究として情動価の違いによる記憶の影響を明らかにする2つの研究を実施した.【虚再認課題】情動価の異なる写真刺激(快情動,不快情動,中立情動)をパーソナルコンピュータ画面に提示しその情動価を評定しながら記銘する記銘課題と,記銘から1日後と1週間後に記銘時に提示された写真刺激,新規に提示された写真刺激(記銘時の写真刺激と共通性あり/なし)をパーソナルコンピュータに提示してその刺激を見たかどうかを判断させ,その確かさを4段階で評定させる再認課題からなる“The Deese-Roediger-McDermott (DRM) Paradigm: DMRパラダイム”を用いた虚再認課題を作成した.健常者に対して課題を実施し,信号検出理論によって得られたd’を情動価ごとで比較した結果,不快情動価の刺激が,他の情動価の刺激よりも正確性が低い傾向が示された.【文脈記憶課題】異なる場所(1階/3階)と時間(午前/午後)で情動価の異なる写真刺激を記銘させる記銘課題と,記銘から1日後と1週間後に刺激自体の見た/見ていないを判断させ,“見た”と判断したときにはこの刺激を見たのは,「どの場所か:場所の文脈記憶」と「いつ見たか:時間の文脈記憶」を2択で解答するように教示する文脈記憶の再生も求める再認課題からなる文脈記憶課題を作成した.健常者での結果では,時間文脈の再生成績に情動価(快情動,不快情動,中立情動)と再生時期(1日後,1週間後)の間で交互作用の有意傾向を認めたが,全体として傾向を示すところまで至らなかった.
3: やや遅れている
今年度にデータ取得が修了予定であった神経心理学的研究が,患者群の対象者(内側前頭前野損傷例とその他の前頭葉損傷例)が研究の取得基準を満たす対象者が少なく予定人数に達しなかった.そのため十分な成果を検証するのに不十分であり,延長してデータ取得を継続し成果を検証する必要性があるためやや遅れていると判断した.
研究期間を延長して,神経心理学的研究の症例対象者のデータ取得に務める.また,内側前頭前野の加齢による影響も踏まえて健常者のデータ取得も更に進めていく.また,データ解析や前年度までの成果を公表に向けた学会への演題投稿や学術論文の作成を行う.
神経心理学的研究は,患者群の対象者(内側前頭前野損傷例とその他の前頭葉損傷例)が研究の取得基準を満たす対象者が少なく予定人数に達しなかったため謝金等の人件費やデータ取得に関する旅費を執行していないことがあげられる.
神経心理学的研究の症例対象者のデータ取得にかかる経費および健常者を対象とした研究にかかる経費として研究協力謝金,データ取得用旅費の執行に当てる予定である.また,研究成果のアウトリーチ活動にかかる論文作成費,学会参加費,旅費などに使用する.
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PLoS ONE
巻: 9(10) ページ: ―
10.1371/journal.pone.0110547