本研究の目的は,脳性まひ児の運動発達を促進する運動発達プログラムを開発するため,歩行動作の基盤の1つとなる立ち上がり動作獲得による培われる「抗重力」方向の力を,運動力学的所見と組み合わせて測定し,体幹-下肢に求める運動を解明することである。 最終年度(平成24年度)は,平成23年度に収集した基礎データに,さらに脳性まひ児のリハビリテーション前後の立ち上がり動作に関する運動力学的所見を蓄積することができた。研究の母集団を大きくできたことで,健常児と比較して,特に動作中の足関節の運動方向が全く異なり,体幹部や股関節および膝関節の関節運動との協調性を阻害している傾向を確認できた。そして,このような体幹-下肢の協調性の困難さが,下肢への荷重量を著しく減少させていることも確認できた。さらに,リハビリテーション前後で脳性まひ児の身体の左右の運動を比較することで,足関節の関節運動だけが左右差を残存させる傾向を有することも確認できた。 これらの所見は,脳性まひ児の体幹-下肢協調性の促進には,特に足関節の運動協調性の改善が重要となることを示唆している。このことは,脳性まひ児の運動発達を促進する運動発達プログラムの開発に向けて大きな前進であったと考えている。このような所見を基に開発された脳性まひ児の運動発達プログラムは,脳性まひ児の体幹-下肢協調性の改善に寄与し,運動発達を一層促進させ,日常生活活動や社会参加の促進に結びつくと考えている。
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