研究概要 |
行動評価表の作成にあたり、66の調査項目に対して、研究協力病院の作業療法士に依頼し、脳損傷患者180名のデータを収集した。さ らに、性別、年齢、発症日、意識レベル(JCS)、注意機能(Ponsford,注意評価スケール)、認知機能評価(MMSE)、日常生活の自立 度(FIM)の結果をカルテより収集した。得られたデータに対して因子分析を実施したところ、5因子30項目が抽出された。第1因子:状 況判断8項目(α信頼数係数0.980)、第2因子:行動の調節7項目(α信頼数係数0.902)、第3因子:記憶7項目(α信頼数係数0.939) 、第4因子:心の理論5項目(α信頼数係数0.903)、第5因子:保続3項目(α信頼数係数0.803)。注意評価スケール(14項目)からは 、第1因子:分配性注意8項目(α信頼性係数0.955)、第2因子:覚醒6項目(α信頼性係数0.931)が抽出された。行動評価から抽出された5因子間と注意評価スケール2因子、およびJCS,MMSE, 日常生活自立度(FIM)との間には、強い相関を認めた(r=0.427~0.688 ,p<0.01)。FIM得点の自立群と非自立群との間 には、すべての因子得点に差が見られた(p<0.01)。重回帰分析では,覚醒(JSC)は注意(覚醒)に影響し、注意(覚醒)は状況 判断、行動の調節、保続に影響していた。注意(分配性)は状況判断、行動調節、心の理論に影響していた。FIM総合得点には行動評 価表の第1因子の状況判断(β=-0.367,p<0.01)と注意評価の第1因子(β=-0.439,p<0.01)に関する項目が影響力を持ってい た.得られた項目の妥当性を高める為に、健常群50名において行動評価および注意検査を実施し評価項目を精査した。得られた結果の一部について、学会発表及び論文投稿を行った。
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