研究課題
慢性心不全患者では、労作時の呼吸困難や心臓悪液質による全身の筋力低下により十分な運動が困難となり、QOLの低下や日常生活動作に支障をきたしてくる。慢性心不全患者の骨格筋筋力は生命予後や機能予後の強力な予測因子であり、日本循環器学会の治療ガイドラインでは、筋力トレーニングや有酸素運動を中心とした心臓リハビリテーションがClassIに位置付けられている。その一方で、重度の心機能障害を有する患者の中には、極度の運動耐容能低下と筋力低下を呈し、十分な運動療法が行えずに要介護の状態に陥ってしまう患者も多く、このような患者に対する有効なリハビリテーションの確立が急務となっている。欧米の先行研究においては、慢性心不全を呈する患者や心移植を待機している患者の下肢骨格筋に対して、神経筋電気刺激(neuromuscular electrical stimulation;NMES)を施行することにより、筋力、筋持久力、運動耐容能や健康関連QOLの改善が得られることが明らかとなってきた。しかし、重症心不全症例の中には植え込み型除細動器(ICD)や心臓再同期療法(CRT)、左室補助人工心臓が植えこまれた症例が多く、これらの症例に対するNMESの効果と安全性については未だ明らかではない。北里大学病院心臓リハビリテーション室では、2009年より心臓リハビリテーションの一環としてNMESを導入しており、その有効性の検証が必要となっている。今年度は、症例数を集積する中で、CRT-Dが施行されたカテコラミン依存性心不全患者と、植え込み型左室補助人工心臓が挿入された症例の2例を学会発表並びに、ケースレポートとして発表した。
2: おおむね順調に進展している
入院早期からの神経筋電気刺激を導入し症例数を蓄積している段階である。左室補助人工心臓患者に対する安全性と効果について有意義な知見が得られたため、ケースレポートとして報告した。
症例数をさらに増加して中間解析を行う予定である。中間解析の結果に基づき再度サンプルサイズの見積もりを行い、目標症例数を修正する必要性を評価する予定である。
収集した資料の解析費用、成果発表のための費用(旅費、論文校正料など)に主に使用予定である。
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International Journal of Cardiology
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