研究課題/領域番号 |
23700625
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
向野 雅彦 慶應義塾大学, 医学部, 特任助教 (30424170)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 脊髄損傷 / リハビリテーション / シナプス / 神経伝達物質 |
研究概要 |
本研究においてはラット脊髄損傷モデルを用い、脊髄損傷および運動負荷によって神経の可塑性にどのような変化が生じるのか、またさらにそれをコントロールしているメカニズムについて探ることを検討の目的としている。脊髄損傷にトレッドミル訓練を負荷すると、機能改善を促進する効果がみられることがこれまでに報告されてきたが、我々はその効果が訓練のタイミングによって変化するかどうか、検討を行った。訓練をしない群(コントロール群)、損傷後1週より訓練を2週間行った群(早期群)、損傷後3週から2週間行った群(遅延群)の3つを比較すると、早期群ではコントロール群および遅延群と比較して改善がみられており、さらに訓練量依存的に下肢機能がよく改善する傾向がみられることを追加実験により確認した。さらに訓練が効果的であったと考えられる早期群において、脊髄内のシナプスの観察を行ったところ、早期群、遅延群ともに興奮性シナプスの関連蛋白の発現増加がみられるものの、早期群では他の二群と比較し、抑制性シナプスの関連蛋白の発現が減少していることが分かった。H反射の経過をみると、早期群、遅延群ともに訓練により増加がみられた。これらの結果から、訓練が脊髄内の興奮性、抑制性シナプスの形成、脊髄内の興奮性に影響している可能性が示された。脊髄内の抑制性シナプスの減少は運動機能と相関することがすでに報告されており、急性期のリハビリテーションが機能的なシナプスネットワークの形成に寄与している可能性が示唆される。 また、我々がメカニズムへの関与を想定しているKCC2については脊髄損傷後の発現減少に加え、訓練によっても一時的な発現減少がみられることを示した。今後さらに経過の詳細の検討を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた(1)運動機能改善に関するpreliminaryな結果の確認(2)腰髄の神経伝達物質の発現検討(3)KCC2発現のpreliminaryな検討については概ね予定通り施行することができた。ただし、組織での蛋白発現検討の裏付けとして予定していたウエスタンブロットは、分子量が大きく二量体の発現検討も必要であることからテクニカルな問題を完全にはクリアできず、検討は継続中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後はシナプスの関連蛋白の発現についてさらに詳細な解析を進めるとともに、メカニズムの鍵として我々が想定しているKCC2の発現検討も予定している。当初の計画ではウイルスを用いた強制発現-発現低下の実験系を準備していたが、異動による実験環境の変化により困難となったため、代替としてK-CL共輸送蛋白をdiffuseにブロックするfurosemideなどの薬剤を用いた検討を行うことを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品購入に充てる予定である。異動による実験環境の変化に伴い、物品費に多くをあてる予定である。次年度において国際学会での発表を予定している。
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