研究課題/領域番号 |
23700625
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
向野 雅彦 旭川医科大学, 医学部, 助教 (30424170)
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キーワード | 脊髄損傷 / リハビリテーション / シナプス / 神経伝達物質 |
研究概要 |
本研究においてはラット脊髄損傷モデルを用い、脊髄損傷および運動負荷によって神経の可塑性にどのような変化が生じるのか、またさらにそれをコントロールしているメカニズムについて探ることを検討の目的としている。 平成23年度には、脊髄損傷後の訓練の効果が訓練のタイミングによって変化するかどうか、検討を行い、訓練をしない群(コントロール群)、損傷後1週より訓練を2週間行った群(早期群)、損傷後3週から2週間行った群(遅延群)の3つを比較すると、早期群ではコントロール群および遅延群と比較して改善がみられ、さらに腰髄内では早期群、遅延群ともに興奮性シナプスの関連蛋白の発現増加がみられるものの、早期群では他の二群と比較し、抑制性シナプスの関連蛋白の発現が減少していることが分かった。平成24年度はさらに検討を進め、我々がシナプスネットワークの変化への関与を想定しているKCC2(K-Clcotransporter2)という膜蛋白の発現検討を中心に行った。KCC2が脊髄損傷後に腰髄で発現が減少することはすでに報告されているが、我々もこの結果を確認し、先行研究と同様、H反射の亢進がみられることを確認した。またさらに、ステップの際に相反性抑制の低下を示唆する筋電図所見がみられることも示した。KCC2はさらに訓練によって発現が変化し、その発現経過は早期群と遅延群で異なっていた。組織損傷の程度と相関するとされる5HTの染色面積の定量比較では、早期群、遅延群ともコントロールとの有意な差を認めず、組織損傷の減少効果は今回のモデルにおいては否定的であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
異動のため実験環境の再構築を要し、施行できた動物実験が限定的であったため、当初予定していた実験の一部が施行できなかった。ただし、電気生理学的検討および組織染色等の施行により、歩行運動時のステップの筋活動パターンおよび腰髄の神経伝達物質発現の変化の確認、KCC2の訓練による発現変化等、メカニズム解明へのヒントとなる重要な所見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後はKCC2を含めた細胞内の塩素イオン濃度にかかわる膜蛋白の定量的検討を進めるとともに、腰髄での神経伝達物質の発現について、セントラルパターンジェネレータに関連する蛋白としてセロトニンやグリシンの発現を含め、さらに詳細な検討を追加する予定である。メカニズムとしてKCC2の関与を証明する実験として、共輸送体をdiffuseにブロックするfurosemideを用いた介入実験の施行を検討している。
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次年度の研究費の使用計画 |
追加実験のための動物の購入、および抗体を始めとする試薬類の購入に充てる予定である。また、今年度中に論文発表を予定しており、投稿に際しての費用に一部を充てることも予定している。
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