本研究においては、ラット脊髄損傷モデルを用い、脊髄損傷および損傷後の運動負荷によって神経の可塑性にどのような変化が生じるのか、またそのメカニズムについての検討を目的としている。 平成23年度および24年度には、脊髄損傷後の訓練の効果が訓練のタイミングによって変化するかどうか、損傷後1週後から2週間の訓練を行った早期群と、3週後から2週間の訓練を行った後期群およびコントロール群(訓練なし)の比較を行い、早期の訓練開始によって有意に高い訓練効果がみられることを示した。また、早期群においては腰髄の前角において興奮性シナプス関連蛋白(VGLUT2)の増加および抑制性シナプス関連蛋白(GAD67)の減少がみられることを示した。さらに、膜蛋白であるKCC2(K-Cl cotransporter 2)の発現変化がこの過程に関与している可能性を示した。 平成25年度には、KCC2の発現変化について検討をさらに進めるとともに、腰髄内の興奮性伝達物質および抑制性伝達物質の発現変化についての検討を引き続き行った。その結果、KCC2についてはこれまでの組織学的な検討に加え、蛋白定量においても損傷後に変化がみられることがわかった。さらにこの変化は訓練介入と損傷後の時期によって大きく影響を受けることも明らかとなった。また、VGLUT2やGAD67の発現量ばかりでなく、synaptophysin等によって標識される全体のシナプス数にも損傷後の時期による増減が見られることが明らかとなった。現在これらの成果を論文としてまとめ、投稿準備中である。
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