自ら関節を動かすことや筋を収縮させることが困難な状況や、高負荷のトレーニングが困難な状況であっても、十分なトレーニング効果が得られる方法の一つとして血流制限下で行う他動的運動に着目し、その効果の検証等に関連する調査を進めてきた。その結果、他動的膝関節伸展・屈曲運動を血流制限下で行うことにより筋肥大や筋力増強の効果が得られる可能性が示された。しかし、この調査の対象者は水泳競技者であったため、普段行っている部活動によるトレーニング効果を無視することはできず、血流制限下で行う他動的運動のみの効果を示すことができなかった。そこで、過去の調査をもとにトレーニングの回数等を見直し、運動習慣のない対象者(年齢:23.8±1.5歳、身長:167.8±6.9cm、体重:59.6±9.2kg)で再調査を実施した。その結果、実験前後の変化率を血流制限なし(CON)と血流制限有り(BFR)のそれぞれでみると、膝関節伸展の伸張性筋力の角速度60度/秒ではCON:-1.8%であったのに対し、BFR:11.8%で、角速度180度/秒ではCON:2.1%に対しBFR:10.4%であった。等尺性筋力はCON:-2.8%に対しBFR:17.2%であった。短縮性筋力の角速度60度/秒ではCON:-5.5%に対しBFR:8.4%、角速度180度/秒ではCON:-3.0%に対しBFR:6.7%、角速度300度/秒ではCON:-4.2%に対しBFR:7.7%であった。膝関節屈曲の筋力においても同様にCONよりもBFRの方が変化率が高かった。以上のように、同一対象者により再調査を実施したところ血流制限下で行う他動的運動のみであっても筋力増強効果が得られることが明らかとなった。
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