研究課題
本研究の目的は近年急速なスピードで愛好家が増えているノルディックウォーキング(以下、NW)が関節痛の予防や運動器の機能向上に有用か、また実際どのような方法で実施するのが効果的なのかを検証することである。H23年度は介入研究を行う上で必要な予備的な実験を中心に行うことを予定していた。今回実施するNWはリハビリテーション分野においても注目されているが、関節痛を有する対象者に対する実施方法は確立されていない。具体的には杖に加える力(荷重量)が変われば、呼吸循環機能や全身の筋や関節にかかる負荷は変化する可能性が高いが、このような観点からNWの効果を報告している報告は少ない。よって今回、健常者に対する予備的な実験として、1)杖に加える荷重量を規定したNWが上肢や体幹・下肢の筋活動に与える影響を、専用の機器を作成して検証した。今回は健常成人10名に対して体重の5%、10%、20%の3種類で実験を行った。その結果、最も効率的な筋活動が得られる荷重量は体重の10%程度であることが明らかになった。また、2)体重の10%と荷重量を規定したNWを行った際の呼吸循環機能を検証した。対象者を健常成人10名とし、呼気ガス分析装置を使用し、体重の10%と荷重量を規定したNWと通常の歩行時の酸素摂取量などを比較した。その結果、最大酸素摂取量や心拍数など歩行時と比較して有意に高い値となった。また、介入研究を実施するための対象者の選定も行った。今回の対象は関節痛を有する高齢者という計画を立てたが、今回協力を依頼した新潟市のシニアクラブでは腰痛や膝痛など単独の関節痛を有する対象者が少なく、様々な痛みや内科的な疾患を有している方が多く、対象者の条件や依頼先を再度検討する必要がある。現在、以前より協力いただいている変形性股関節症の患者団体が協力してくださるということで、こちらの対象者を中心に介入時期を検討している。
2: おおむね順調に進展している
本研究は2年計画で、初年度は介入研究を粉うために必要な基礎的な実験を実施し、より効果的な方法を確立することを目的としていた。このような観点からH23年度は概ね計画通りに進められた。しかし、実際の介入における対象者の選定の方法やその基準を再度修正する必要がある。
H23年度の健常者を対象とした基礎的な実験から、より効果的にNWを実施する際の指導方法が確立された。H24年度にはこれらを踏まえて実際に介入研究を行い、その効果を多角的に判断していく必要がある。その際の対象者の選定に関しては、現状では変形性股関節症患者を対象とした計画は実施可能な準備ができたので、その他の疾患に関しても同様に対象者の選定を進める。
研究者の所属が変更になったので、研究環境を整備するためにパソコンやその他の周辺機器などの費用がかかってしまうが、研究そのものに必要な機材はH23年度に購入済みである。H24年度は予定通り海外などの学会に参加し、その成果を公表するための準備に研究費を使用する予定である。
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運動療法と物理療法
巻: 22(4) ページ: 416-425
Hip Joint
巻: 37巻Suppl. ページ: 149-152