研究課題/領域番号 |
23700642
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
水谷 謙明 藤田保健衛生大学, 藤田記念七栗研究所, 助教 (30351068)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 脳梗塞 / リハビリテーション / 薬物併用療法 / 神経可塑性 / 機能回復 |
研究概要 |
近年、脳卒中後の麻痺や障害に対して、脳の可塑性変化に基づいた新たなリハビリテーションという概念が浸透し始め、積極的に麻痺回復を行う治療戦略に関心が高まりつつあるが、脳内の分子機構などについては未だ不明な点が多い。そこで、運動機能回復に関わる脳内機能的分子の検出、およびその分子学的な機序について基礎医学面から裏付けることを目的として、脳梗塞モデル動物を用い、自発運動訓練による運動機能の回復過程を観察するとともに、大脳基底核のモノアミン動態について検討を行った。 脳梗塞モデルラットはPhotothrombosis による大脳皮質脳梗塞を作製した。手術2日後から回転ケージによる自発訓練を行った群をExercise (EX) 群、訓練を行わなかった群をControl (CNT) 群とし、脳梗塞前と梗塞後経時的にRotarod testによる運動学的機能評価を行った。さらに大脳基底核におけるモノアミンの定量比較と免疫組織学的解析を行った。Rotarod testによる運動機能評価では、CNT群と比較してEX群において、脳梗塞後6日目以降に歩行持続時間の有意な増加が認められた。このことは、自発運動訓練が運動機能の改善に有用であったことが示唆される。モノアミンの比較においては、脳梗塞2日後の障害側線条体ドパミン (DA) 濃度は梗塞前と比較して有意な増加、脳梗塞10日後EX群のDA濃度は、CNT群と比較して有意な減少が認められた。さらに免疫組織学的解析ではCNT群において黒質のTH免疫反応性が高い傾向が観察された。一方、5-HTは脳梗塞10日後CNT群と比較して、EX群において有意な増加が認められた。また5-HT濃度とrotarod testにおける歩行持続時間との間に有意な正相関が認められたことにより、5-HTが運動機能回復過程の一端に関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は当初、ヒトの脳梗塞に比較的近似した、中大脳動脈閉塞再灌流による脳梗塞モデル作製を計画していたが、梗塞巣サイズのばらつきが問題として浮上した。麻痺程度の層別化により、ある程度解決される問題ではあるが、今後の実験への効率化を考慮し、Photothrombosis による脳梗塞モデルへの変更を行った。そのため、梗塞領域の大きさや位置などの設定、麻痺程度および運動機能障害の評価、回復過程における運動機能評価など基礎的事項の検討に多くの時間が費やされた為と考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度は、脳梗塞モデル作製の技術的確立、各種運動訓練方法および、運動機能評価法などの検討を行い、これらの基礎的検討事項から得られた結果を基に、訓練方法・強度・評価法などを決定した。今後の研究の推進方策については、更なる運動機能回復を目指し、薬物併用療法の検討を開始する。 具体的には、これまでの研究により検出された、脳梗塞後の運動機能回復に関わる候補分子について、機能的活性化を目的とした薬剤投与を行い、麻痺および運動機能の回復程度を確認しながら最適な投与量および頻度を決定する。さらに、麻痺評価および運動学的機能評価において有意差が得られた時点における脳組織からタンパク質を抽出し、Immunoblottingなどを用いてタンパク発現の比較解析を行い、運動訓練および薬剤投与により増強される分子機構の解明を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究内容としては、薬剤投与による運動機能回復に関連した、脳内分子機構解明のための解析を計画している。そのため、物品費に関しては、投与薬剤、タンパク発現解析関連の試薬・消耗品が中心であり、タンパク発現の比較解析としてImmunoblotting、および、その発現の局在解析として免疫組織学的解析用の関連物品購入を計画している。また、実験動物を対象としているため、それに関わる物品・消耗品の経費も併せて計画している。
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